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雨上がりの朝、どこまでも続くブルーベルとワイルドガーリックの群集に、身も心も肌も、洗われてしっとり * 一日目は、こちら >>  二日目:豪華な朝食でバッチリ腹ごしらえをして、バードリップのB&Bをあとに。車道に出てすぐコッツウォルド・ウェイの標識を見つけ、森の中へと入って行きました。湿気を帯びた暑さは、昨夜の嵐ですべて流され、ヒヤッとした空気が、足元から湿った大地の匂いを運んできます。新緑も恵みの雨を喜んでいたのか、艶やかな光を放っています。雨上がりは、独特の静けさと清らかさがあり、歩いていると洗礼を受けているような・・・。私利私欲にまみれている私たちには、なおさらそれがビシビシ強く感じられるのでしょう。胃も心も満たされ、「極楽じゃ〜」と、まったりしてきたふたり。歩く速度もノロノロ。上を見上げれば、ブナの葉で覆われた空は、緑で埋め尽くされ、その隠された青空が逆に地面から湧き上がってきたかのように、ブルーベルの群集が足元からどこまでも続いていました。ここウィットコンブ(Witcombe)の森は、英国国内でブルーベルの名所といわれているだけあります。本当に可愛らしい春の光景。日本の桜を愛でるときに感じる、美しさと儚さへの賛美とは、また違う味わいのお花見です。 [osmap centre="SO8910712455" zoom="5.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswolds-Way-_-Birdlip-to-Painswick.gpx" markers="SO9244714520!red;出発点: バードリップ|SO8658009625!green;終着点: ペンズウィック"] [osmap_marker color=red] 出発点: バードリップ [osmap_marker color=green] 終着点: ペンズウィック ナショナル・トレイルのどんぐりマーク、凸凹コンビが名付けた"Acorn God"に導かれコッツウォルズ地方を満喫中  生い茂る高木の中をひたすら歩いていきます。気温が徐々に上がり、熱気が篭り始め、じとーっと汗が出始めました。時々ポコっと視界が開けるスポットで、風にあたり涼みながら、遠くの田園風景をボーと眺め、そしてまた森の中を進む。それを繰り替えしていきます。コッツウォルドの景色は、まさに「Chocolate-box ー おみやげ用のチョコレートの包装箱に載せている写真のような美しさ」。どこをとっても絵になります。コッツウォルズ地方は、14〜16世紀に羊毛産業で栄えましたが、18世紀産業革命後、時代は毛織物から大量生産の綿製品へ移り、時代に取り残されてしまいます。しかしそれは逆に奇跡的に荒らされることなく、古き良き英国を今に残すことができたました。英国ので「カントリー(Country)」の意味は、日本で言う「田舎」のイメージとは違います。美しい田園地帯に家を持つことはステイタスであり、逆に都会にしか住めない人たちは、労働者といった感覚があります。つまり、カントリーライフは、英国人にとって、洗練された憧れの生活なのです。その夢見るカントリーライフで一番人気エリアが、このコッツウォルズ地方。ロンドンから2時間ほどで行ける理想郷として世界中の観光客を魅了し、英国セレブやリタイアしたひとたちが、こぞって家を購入する人気のスポットとして返り咲いたのです。その後、この美しい景観を守っていこうと、1966年にArea of Outstanding Natural Beauty – AONB(特別自然美観地域)に指定され、国、地方自治体、住民が協力して、持続可能な景観保護と地域社会に努めています。その効果の現れなのか、外国人の私たちでも歩いていて、「なんか知らないけれど、懐かしいなぁ〜」とそんな気分にさせてくれます。 チーズ転がし祭りが開催されるコパーズ・ヒル(Copper's Hill)。写真ではわかりずらいが、かなり急斜面  タラタラ歩いていると、そこへ突然とてつもない急な坂に出くわしました。「この暑い中、マジでここを登るのか・・・」と地図をなんども見直しましたが、そこに選択の余地はありません。諦めて登り始めていきますが、距離がそうないためか、上まできれいな直線の道になっており、乾いた土で足は滑るは、暑さで息がさらに苦しいはで、ヘトヘト。「朝食のエッグベネディクト食べ過ぎなければよかったよー」と叫ぶふたり。後悔先に立たず・・・というか、先に進まず。ようやくの思いで登りきり、広場へと出てきたところで、ふたりともまさに「Time!! ー ちょっと待った!」。地べたに座り込みひと休みしなくては、動けませんでした。「なんじゃ、ここは」と水を飲みながらガイドブックを見ていると、英国の奇祭のひとつであるThe Gloucestershire Cheese Rolling ー チーズ転がし祭りが開催される丘ではありませんか。日本のテレビ番組で、お笑い芸人さんがこの祭りに参加した模様が放送されていた、あの丘です。「こんなところ、チーズ追いかけて転がり落ちていくなんて、アホか!」ふたりとも首を横にフリフリ「英国人の考えること、本当によくわからないよねー」と苦笑い。 地元民たちが、愛犬とともにランニング。この環境が家の近くにあることは、健康面から考えても、必要なこと 凸凹コンビの未来の姿!?どこへいっても、女性二人で仲良く歩く方々をよく見かける。どこの国でも女性は元気 地元に愛される道でなければ、後世には残せない AONB指定地域総面積(黄色部分)は、2038平方キロメートル。ほぼ東京都の大きさぐらいで、英国内のAONBで一番広い。青い線が、コッツウォルド・ウェイ © Cotswold Way | National Trails  今回の旅を通して印象的なのが、訪問客だけでなく、地元のひとたちが、犬の散歩やランニングをしている姿をよく見かけたことです。コッツウォルド・ウェイは、AONB指定地域の一番西側に、北から南へと道が一本引かれてたところになります。観光客が訪れるチッピング・カムデン、ブロードウェイ、バースなどを通過しますが、コースのほとんどは、地域住民の生活圏内を通り抜けていきます。ですので、観光ツアーで出会う景色とは違い、コッツウォルド本来の姿が垣間見れる。観光スポットが表なら、このトレイルは裏道を歩いているような感じです。トレイルと聞くと、アウトドアや観光目的で、お客さま向けのものと考えがちですが、英国の場合は、まず住民が日常で利用しているフットパスがベースになっています。レクリエーション目的でのフットパス保護運動は、300年前に始まりましたが、それ以前から普通に通勤通学で使っていた生活歩道がフットパスです。そして、それをより面白くしようと作られたのが、数多くあるフットパスを一本に繋げた、今回のコッツウォルド・ウェイ含むレクリエーショナル・トレイルです。米国のウィルダネスを歩くトレイルとは、まったく異なる文化がそこにはあります。だから、ヘタレな我々凸凹コンビでも、そんなにトレーニングもせず、気軽に歩きに行けるトレイルが多いのです。 石屋の敷地に、フットパスが縦断している。勝手に入って、そのまま進んでも、問題なし 「ゴルフ場にこれから入ること、心せよ」と注意書きが・・・。「入ってもいいけど、なんかあったら自己責任よ」という考え方、英国らしい  その後も森の中を歩き続け、車道にでてきたところで、今回のコース最後のポイントになる丘陵の上にできたもうひとつの森、ペンズウィック・ビーコン(Painswick Beacon)にあるパブを発見。キンキンに冷えた飲み物求め、倒れこむように中へ。炭酸水を一気飲みしたジルちゃんは、「もー、蒸れて我慢できないよ」と靴を脱ぎ、サンダルへ履き替え始めました。一息ついた後、重い腰を持ち上げて、もうひと踏ん張り、ペンズウィック・ビーコンの中を歩き始めます。暑さで体が怠く、二人とも無言に・・・。でも、これはこれで、心地よい時間が流れているのです。途中、この地方の家々に使われいる蜂蜜色の石灰石、コッツウォルド・ストーンを扱っている石屋の敷地内やゴルフ場を抜けて行きます。人の家に勝手に入り込むようで、外国人ふたりは戸惑うのですが、でもいいんです、勝手に入って。「通行権という印籠が、目に入らぬか〜ぁ!!」と、石がゴロゴロあっても、ゴルフボールが飛んでても、堂々と歩いて行きます。そうこうしているうちに、最終目的地のペンズウィックの村に到着し、やっぱり最後はビールで旅のシメとしました。 ゴルフ場を、サンダルで歩くジルちゃん。違和感があっても歩く権利があるので。でも、ボールには気をつけて! 真のコッツウォルドを見たければ、おススメのトレイル  まずは、地元のひとたちが歩いてなんぼ。それが英国のトレイルの根底にはあることを、今回のコッツウォルド・ウェイを歩いていて強く感じました。逆に、地域住民たちが歩かない道に、郷土愛からくる愛着もなければ、整備し続けていこうと思わせる気持ちも生まれない。安易に観光資源としてトレイルを管理していても、道は存続できない。その姿勢が、国内外でも定評があるAONBコッツウォルズが進めている持続可能な景観保護に繋がっているんだろうと感じました。ただのポッシュ気取りのエリアではないんだな〜、コッツウォルズ地方は・・・。ふたりでチョコレートを頬張りながら、そう思ったのです。 8th May 2016, Sun @ Cotswold Way (Birdlip - Painswick), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way : Trail Guide (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

 春が来た、春が来た、どこに来た〜♪ 英国にも春が来たぞー!!ということで、友人のジルちゃんと英国を歩く季節がやってまりました。英国育ちでない凸凹コンビが、ぶらぶらと歩きながら、千変万化するこの島国を肌で感じ取る。そんな旅は、山あり谷ありの我々の人生とも重なるということで、二人旅シリーズを"Deco Boco Walking"と命名しました。そしてこのDeco Boco Walkingの記録を残していこうと、フェイスブックで専用のページも開設してみました。 Deco Boco Walking: www.facebook.com/walkingupdown/ ぶらぶら歩きもページ開設もあまり深く考えず、ノリでやっておりますので、今後どんな展開になりますやら・・・、まずは、行けるところまで進んでみます。気長にお付き合いいただければ幸いです。 クリーブ・ヒルにあるゴルフ場から今回の旅はスタート。COTSWALD WAYの標識がお出迎え  さて、今回の旅は、春といえばお花見でしょ!っということで、英国流お花見は、なんぞやと考えた時、春の花の代名詞、ブルーベルを愛でることではと思い立ち、有名スポットがいくつかあるコッツウォルド・ウェイを歩いてきました。なんせ凸凹コンビのふたりは、Lazy Lady Walkers(気合の入っていない、ゆるゆる女性ハイカー)でして、寒くて、暗くて、泥だらけの英国の冬は、もっぱら脳内で旅してばかりでしたが、ようやく靴の紐を閉めて、外へと飛び出す心の準備が整いました。コッツウォルド・ウェイは、前回おしゃれに紅葉狩りと思って出かけたら、暴風雨に見舞われ、コッツウォルズ地方のポッシュな(上級階級らしいさま)雰囲気を味わうどころか、服はびしょ濡れ、髪はボザボザ、足元は泥だらけという、ワイルドな旅で終えましたので、今回はある意味リベンジ!!(コッツウォルド・ウェイ 秋編は、こちら >>)前回歩いたコースより、若干北へ上がったコース、一日目は、クリーブ・ヒル(Cleeve Hill)からダウズウェル(Dowdewsell)、二日目は、バードリップ(Birdlip)からペンイズウィック(Painswick)をぶらぶらしました。 歩くひと、犬の散歩しているひと、羊の放牧。そして、ここはゴルフ場。まさに多目的に使われている土地があるのが英国式 [osmap markers="SO9891927164!red;クリーブ・ヒル" zoom="0"][osmap_marker color=red] クリーブ・ヒル  一日目:雨上がりの五月始めの週末、英国障害競馬の祭典が有名なチェルトナム(Cheltenham)の駅に降り立ち、そこからタクシーでクリーブ・ヒルに向かいました。ブルーベル満開時期は過ぎてしまっているかなと少し心配しながらも、坂道を上がっていく車に揺られ、私たちの期待値も高まります。今回のスタート地点は、なんと丘の上にあるゴルフ場。早速COTSWALD WAYの文字とナショナル・トレイルの印であるどんぐりマークが記された標識がお出迎えしてくれました。英国では、フットパス(通行権のある歩道)が法律によって守られているので、そこが私有地だろうと、農園だろうと、フットパスがあればいつでも歩いてOK。もちろんゴルフ場でも同じ。ゴルファーとは明らかに違う服装の人たちが、プレイとはなんら関係なく、勝手に歩いているのです。さらに今回のゴルフ場には、ゴルファー、ハイカー、ランナー、サイクリスト、犬の散歩するひとたちと混じって、なんと羊も遊牧していて、皆好き勝手にそれぞれの方向へと進んでいく、まず日本では考えられない不思議な光景がありました。さらに羊含め、お互いに邪魔しないように、いい距離感を保っていて驚きです。一歩間違ったらカオス状態になりそうなのに、絶妙なバランスで、のんびりと平和な時間が流れていました。でもよく考えたら、羊飼いたちが始めた遊びが起源と言われている(諸説あり)ゴルフ。また、草刈り機が開発される前は、放牧で伸びた草をコントロールしていたそうなので、羊がいてもおかしくはないはずです。むしろ、今の時代ではエコかも・・・。  「ゴルフボールが、羊のフンに突っ込んだら、どうするんだろうか?」「一発目で突っ込んだら、ホール・イン・ワンならぬ、プー(Poo)・イン・ワンだね。」とふたりで大笑いしながら、先へと歩を進めました。ゴルファーにとっては、迷惑な客です。 [osmap centre="SO9768123568" zoom="5.00" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswolds-Way-_-Cleeve-Hill-to-Dowdewsell.gpx" markers="SO9892427188!red;出発点: クリーブ・ヒル|SO9848919721!green;終着点: ダウズウェル"] [osmap_marker color=red] 出発点: クリーブ・ヒル [osmap_marker color=green] 終着点: ダウズウェル ナショナル・トレイルの印であるどんぐりマークの標識の向こうでは、ゴルファーがティーグランドでショットを打っていた。柵も囲いもない。共有が当たり前のようだ  コッツウォルドのウォルド(Wold)は、古語で丘(Hill)という意味になりますが、まさにその名の通り、ゆるやかな丘陵地帯 ー Rolling Hillsが続いていて、天気が良い日には、ウェールズまで一望でき、開放感があります。ナショナル・トレイルの中でも、比較的アプローチしやすいコースで、なだらかとはいえ起伏があり、変化に富んでいて、飽きがきません。ポツンと現れるコッツウォルドの石造りの家が並ぶ村がよいアクセントになり、まさに古き良き英国を体現した絵画のような風景。さらに、標識も道もきちんと手入れされていて、まず道に迷うことがないのは、私たちのような読図がイマイチの人間には嬉しい限りです。 生まれたばかりの子羊たちが、なんとも初々しい。母親にくっついて歩く姿は、自然と笑顔にしてくれる キッシング・ゲート(Kissing Gate)と呼ばれる門扉。人だけが通れ、家畜が逃げないようにするためのもの[  ベラベラしゃべりながら、丘の稜線上にある自然保護区、農地などを縦走していきます。我々ふたりは、身なりと話す英語(ひとりは、カナダ英語。もうひとりは、日本語英語)から、明らかにコッツウォルドの人間ではないのがバレバレで、地元の人たちも興味津々なのか、「どこから来たの?」とよく声をかけられました。ハイカー慣れしているのか、みなさんフレンドリーで、プチ情報を教えてくれたり、わざわざ道案内までしてくれたり。そして言葉の節々にコッツウォルドの住人である誇りが感じとれ、自慢の土地を見ていっておくれよの気持ちがひしひしと伝わってきます。お国自慢したくなるのは、どこも同じですね。 犬の散歩中の女性と遭遇。凸凹コンビを不思議に思ったのか、すれ違いざまに声をかけられた  そうこうしているうちに、丘の上から緩やかな坂を下り始め、今日のハイライト、ワイルドガーリックが生息するダウズウェル自然保護区の森に差し掛かりました。今までのどこまでも広がる空と大地の絵とはうって変わって、青々と生い茂る木々の中を抜けていきます。ヒヤッとする涼しい風が、汗ばんだ肌に心地良い。そして緑に白玉模様のカーペットとなったワイルドガーリックが一面に咲いており、目にはおとぎ話のワンシーンのように美しく映り、鼻にはニンニクの匂いを感じとれ、食欲をそそります。お腹空いたー!!ということで、倒れた丸太に腰掛け、遅めの昼食。朝握った鮭おにぎりを頬張ります。鼻からニンニク、口からシャケ。なんて素敵なマリアージュ。しかも、カナダ人のジルちゃんが、日本食のおにぎりを、英国の森で食す、へんちくりんな現象。思わずシャッターを切らずにはいられませんでした。 カナダ人が英国の森で日本のおにぎりを頬張る。シュールだなぁ〜  その後、更に丘を下り、大きな貯水池に出てきました。ひとりサイクリングで、一息している男性。水辺でピクニックを楽しむ若いカップル。森を散策している家族連れ。先ほどのゴルフ場同様、それぞれがそれぞれの楽しみ方でこの場を共用している。暗黙の了解で、お互いに邪魔しな距離感を保ちながら・・・。英国民性の素晴らしいことと一言で言ってしまえばそれまでなのですが、どうしてこのようなことが自然とできるのか。どうゆう経緯でこのような習慣が確立したのか、私には不思議です。でも確かなのは、そこには、何にも干渉されない心地よさがあり、現実の役職や立場などを忘れさせてくれ、自分が自分らしくいられる空間があること。だからこそ、みなこの場にいたんだと思います。 これでもかと続くワイルドガーリックの園 可愛らしい花を嗅いでも、にんにくの匂い  今日の旅はここまで。車道に出て、タクシーを呼び、明日のスタート地点、バードリップにあるB&Bへ。晴れていた空が、宿に着いた途端、黒雲に覆われ、夕立の雷が落ちてきました。それをBGMにいつも通りビールで乾杯!B&B内にあるパブには、ハイカー、サイクリスト、観光客、地元民で、いっぱいになっていました。ここでも異色凸凹コンビに話しかけてくる人が多く、中には毎年どこかへ歩きに行っている男性3人グループもいました。今まで、デムズ・パス、オファス・ダイク・パス、サウス・ウェスト・パス、のナショナル・トレイルを歩いてきたとのこと。天気のせいか、旅のせいか、酒のせいか、皆テンションが高く、ノリノリで話してきます。このような場が、いい情報交換の場になるようです。しかしみなさん、歩くの好きねぇ〜。 二日目につづく。 二日目は、こちら >>。 7th May 2016, Sun @ Cotswold Way (Cleeve Hill - Dowdeswell Wood), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way : Trail Guide (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

 深秋。朝晩の冷え込みは、冬の足音がそこまで来ていることを知らせてくれています。不思議な国、英国を歩こうと、カナダ代表ジルちゃんと日本代表シノの凸凹コンビがゆく。今回は、最後のチャンスを逃すなとばかりに、コッツウォルド・ウェイへ紅葉狩りに行ってきました。 [osmap markers="SO8497504976!red;ストラウド" zoom="0"][osmap_marker color=red] ストラウド  ロンドンから西北西150キロほどに位置し、石灰岩の丘陵地帯であるコッツウォルズ地方。羊毛取引で栄えた中世の趣をそのまま残した村、藁葺き屋根と蜂蜜色の石灰石、コッツウォルド・ストーンの家々と美しい田園風景が続いています。イングランドとウェールズ内で最大のArea of Outstanding Natural Beauty - AONB(特別自然美観地域)であり、まるでおとぎ話の世界にいるような景観が、古き良き英国を感じられると、英国セレブの多くが別荘を所有し、日本人観光客にも大人気です。そのコッツウォルズ地方を縦断したトレイルが、コッツウォルド・ウェイで、ナショナル・トレイルのひとつです。産業革命時代に起こったアート・アンド・クラフツ運動の重要な拠点のひとつだったチッピング・カムデン(Chipping Campden)から、女流作家のジェーン・オースティンが暮らしていた保養地のバース(Bath)までの、約160キロの道となります。今回は、トレイルのちょうど真ん中あたり、ペインズウィック(Painswick)からストラウド(Stroud)までを歩いてみました。  あいにくの天気。ガラス窓を激しく打ち続ける雨を気にしながら、バスに揺られて、ペインズウィックに到着。吹きっさらしの丘を、まるで矢が降っているような雨と風の中、歩き始めました。途中で出会った牛たちも「アンタたち、物好きね」と言いたいのか、不思議そうに我々を見つめ、道を通らせてくれました。前線が、妙に生暖かい雨をもたらし、二人のメガネを曇らし続けて、ちっとも美観を拝めません。強風で紅葉狩りどころか、葉と共に吹き飛ばされそうになりながら歩いている。このおかしな状況に、"This is ridiculous(アホくさい)!!"と叫び、笑いが止まりませんでした。道中、単独で歩いている、ずぶ濡れの男性に二回ほど遭遇しましたので、どうやらアホは私達だけではないようです。午後には雨が上がるという予報を信じて、まずは進みます。 [osmap centre="SO8393507371" zoom="5.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswold-Path-_-Painswick-to-Stroud.gpx" markers="SO8658309648!red;出発点: ペインズウィック|SO8152304708!green;終着点: ストラウド"] [osmap_marker color=red] 出発点: ペインズウィック [osmap_marker color=green] 終着点: ストラウド 林の一部は、ナショナル・トラストの管理下に。そのエリアだけ、 綺麗に整備されすぎて、逆に不自然に感じる  トンネルのような細長い林の中へ。英国では、1600年、もしくはその前に存在していた森林をAncient Woodlandと国が指定し、保護の対象となっています。長年燃料として使われてきた森林は、今では国土全体の13%ほどしか残っていません。他の欧州国に比べても、圧倒的に少ない。そのため、どんなに小さくとも、古い木々が密生しているエリアは、徹底して管理しているようです。失ってから、森のありがたみを理解したのか、なんとも皮肉です。そんなAncient Woodlandに指定されているブナ林を、二箇所ほど通り抜けました。「Ancient Woodland ー 原始林と言われても、日本のばあちゃん家の裏にある雑木林みたいな感じだな〜。」「Woodland ー 森林地帯っていったら、カナダではクマやヘラジカが住んでいるようなところだよ。」頑張って自国の森林を守っている英国人の気持ちなどおかまいなし。よそ者外国人二人は、言いたい放題。しかし、英国の森林は森林で、独特の味がありますし、何よりも人が歩くことを前提に管理しているので、散歩には快適です。 目の前が開け、青空が見え始める。写真右、木々の向こうに見える青い線が、セブン川。そしてその反対側が、ウェールズ ナショナル・トラストのどんぐりマークが、私たちの歩きを見守り続けている  残念なことに、今回の強風で多くの葉は枝から地面へとすでに落ちていました。とはいえ、紅葉によるレッドカーペット上を歩いているようで、なかなか趣があります。足を踏み込むたびにサクサクと音がする。蹴り上げると、葉がヒラヒラと舞う。落ち葉と戯れ合う足は、体の奥底に隠れていた童心を、くすぐり始めました。そうこうしているうちに雨がようやくあがり、地元の人たちが犬の散歩に現れ始めました。高級ハンティング・ブランドのワックスジャケット、ハットに、長靴を履いた人たち。さすが、コッツウォルド。ポッシュな人たちが愛犬と共に、洗練された大人の時間を過ごしていました。どこぞの社交界に迷い込んだような、場違いの大きな「子供たち」のぶらぶら歩きとは、明らかに違います。しかし、童心にかえっても、しょせん中年おばさんのふたり。気にせず歩き続けます。  林を抜けて、再び丘へ出てきました。最後のひと押しとばかりに、強風が全てを飛ばし、突然青空が見え始めます。まるで、舞台に立った役者の目の前にある幕が上がったかのよう。ブリストルへと流れるセブン川。そしてその川を挟んで反対側に南ウェールズが広がっていました。ブレコン・ビーコンズ国立公園にあるブラックマウンテンズも見えます。雨風に打たれながらも、なんとかここまで来たご褒美。サプライズ・プレゼントに、歩く遊びに半信半疑だったジルちゃんの足も、必然と軽くなり嬉しがっているのがわかります。 スタイル(stile)と呼ばれる踏み越し台。左側にある木製の柵は、犬用。中央二枚の板を上にあげると、犬が通れる仕組みになっている  収穫後の畑、ワイン用のぶどう園、馬牧場を通り過ぎながら、徐々に丘から降ってくると、電車の音が聞こえ始めました。ストラウドがそう遠くないことを知らせてくれています。そしてついに、繊維工場への輸送に使われていたストラウド運河へと出てきました。この運河は、先ほど丘の上から見たセブン川へ繋がっているそうです。大雨のあとということもあり、歩いてきたフットパスはかなりぬかるんでいて、気が付いたら靴やズボンの裾が泥だけになっていました。なんとか泥を落として、街中のパブへダッシュ。ひと仕事終えて、ビールで乾杯。飲みながら、ふっとジルちゃんが、「今度カナダに里帰りした時、山靴探してこようかな〜」とつぶやきました。普通の運動靴で歩いていた彼女。どうやら、ぬかるんだ坂道は、さすがにすべることに気がついたようです。 ジルちゃんもぶらぶら歩きに本気になり始めたのかな・・・。しめしめ。 7th November 2015, Sat @ Cotswold Way (Painswick - Stroud), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

国の遺産と言われても、よくわからない  2018年2月平昌冬季オリンピック。日本人選手の大躍進で、日本では大盛りあがりだったようですね。日本において冬季五輪は、夏季ほど注目されていないイメージがありましたが、世界に通用する実力選手たちが、幅広くいろんな競技で活躍しているおかげで、立派なメジャーイベントにまで発展したようで、驚きました。これは、ひとつに長野オリンピックが残した遺産が、形になって現れた結果なのかもしれませんね。それと同時に、あの狭い日本の国土が、どれほどバラエティに富んだものなのか、物語っているとも感じました。夏季、冬季五輪両方での強豪国は限られ、大抵は大国です。例えば、同じ島国の英国は、夏季は強いですが、冬季は競技人口が少なく、ほとんどの選手は欧州に拠点を起き、自国でトレーニングできる環境がありません。冬季は、ウィンタースポーツの大会。つまり、自然の中で行われるのが基本にある、アウトドアスポーツです。それができる環境、雪山や凍湖があるのかが前提にあります。夏季、冬季両方のスポーツが楽しめる多様な土地が、ギュッとコンパクトに詰まっている国。世界にも稀に見るユニークなもので、日本の大事な遺産であると考えられないでしょうか。  さて、ここで2回も安易に「遺産」という言葉を使いましたが、そもそもこの最近よく耳にする「遺産」とは、なんぞや?とずっと疑問に感じていました。遺産=お金のイメージがまず先にきますが、よくメディアで見聞きする「遺産」は、それとはちょっとニュアンスが違うようです。英語では、国レベルの遺産という意味では、"Heritage""Legacy"と表現することが多いようです。前者は、歴史的・文化的な価値のある文物が、代々受け継がれていくもの。一番わかりやすい例は、UNESCO World Heritage、ユネスコ世界遺産。後者は、財産などの金銭的価値のあるもの、例えば、施設、インフラ、経済活動が、次へと受け継がれること。東京五輪誘致の際に、よく「オリンピック・レガシー」という言葉が使われていたのが、記憶に新しいです。しかし、日本語ではどちらも「遺産」と捉えるため、私の中でHeritageとLegacyの両方の意味が混在して、いまいち英語のニュアンスがわからない。そこで、「国の遺産」を英国ではどう捉えているのか、この目で直接確かめようと、家をと飛び出しました。 デヴォン州、シドマス付近。三畳紀の露頭が圧巻。約2億年前の地球の状態を教えてくれる赤褐色の層が、目の前で見れる  はじめに、Heritageを理解しようと、2001年から世界自然遺産に登録されているドーセットと東デヴォンの海岸、通称ジュラシック・コーストと、2017年に世界文化遺産へ登録されたばかりのイングランド北部にある湖水地方を覗いてきました。そして、Legacyでは、2012年に開催されたロンドン五輪のその後の街の様子を、観察してきました。世界遺産にしろ、ロンドン五輪レガシーにしろ、多くのレポートが専門家によって書かれていますが、今回は、一般の訪問者としてぶらぶら歩きながら感じたことを、素直に書いてみたいと思います。 世界自然遺産ジュラシック・コーストへGO! [osmap markers="SX9989181167!red;エクスマス" zoom="0"][osmap_marker color=red] イングランド南西部 エクスマス  まずは、イングランド南西部にある世界自然遺産ジュラシック・コーストへ。"Jurassic Coast World Heritage Site - 95miles of coastline ...

(England Coast Path)約10年前に英国で出会ったカナダ人のジルちゃんと日本人の私。毎度おなじみ凸凹コンビが、ワンダーランド・ブリテン島を歩いて旅します。 [osmap markers="TR3214741255!red;ドーバー" zoom="0"][osmap_marker color=red] ドーバー 2017年第一弾は、英国南東部にあるケント州、ドーバー海峡を見ながら歩くイングランド・コースト・パス。コースは、ハイズ(Hythe)ー フォルクストン(Folkestone)ー ドーバー(Dover)ー セント・マーガレット・ベイ(St. Margaret Bay)。ドーバーは、ブリテン島が欧州大陸に一番近いポイントで、英国の玄関口になっており、大きな港町です。フォルクストンは、ドーバー海峡を渡る海底トンネル・ユーロトンネルの入り口となっています。大昔から現在に到るまで常に英国・欧州間の関係に影響されてきた地域であり、また真っ白なチョーク(白亜)岩壁が有名なところでもあります。そんな産業・歴史・自然がミックスされたユニークな海岸線を、ランぶら歩きしてきました。 ロンドンで開催された、ジルちゃんデビュー小説"The Last Wave"の出版記念パーティーにて。ジル先生のご著書にサインをいただいております  今回の滞在拠点は、フォルクストン。ロンドンから電車で一時間という立地の良さもあり、19世紀ヴィクトリア王朝時代のリゾート地として栄え、今もその雰囲気が残されています。一日目は、ここから、ドーバーを通り抜け、セント・マーガレット・ベイまでの東へ向かう約19キロ。二日目は、逆に西のハイスへ7.2キロ歩きました。今回は、いつものランぶら歩きだけでなく、もうひとつ大きな目的がありました。それは、ジルちゃんの長年の夢であった小説家デビュー作”The Last Wave”が今春に出版され、その本の舞台になったのが、このドーバー。ということで、聖地巡礼、出版記念歩き。主人公が、ドーバー海峡を横断泳するチャンネルスイマーということで、実際に挑戦した人たちの偉業を生で感じる旅でもありました。 [osmap centre="TR2883740680" zoom="4.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/English-Coast-Path-_-Folkestone-to-Dover.gpx" markers="TR2247235405!red;出発点: フォルクストン|TR3697244595!green;終着点: ドーバー"] [osmap_marker color=red] 出発点: フォルクストン [osmap_marker color=green] 終着点: ドーバー  一日目:天候は、良好。六月初めですが、すでに夏の日差しが照りつけ、少し暑いぐらいでした。夏のホリデーシーズンにはまだ早いですが、週末ということもあり、ぶらぶら歩いている人たちが、結構いました。フォルクストンの港を通り過ぎ、町から徐々に離れていくと、早速白亜の崖が見え始め、テンションが上がります。 街を離れてすぐに白亜の岩壁がお目見え。空の青さが、チョークをますます白く輝かせる おなじみナショナル・トレイルのどんぐりマーク。今回は、England Coast PathとNorth Downs Wayのダブルどんぐり。非常に珍しい  今、イングランドでは、海岸線を2020年までに全開通させる新たなナショナル・トレイル、イングランド・コースト・パスの整備が着々と進んでおり、ここケント州は、1/4のコースが2016年に開通し、2020年に向けて残り3/4を作業している最中。今回は、開通したコースのほんの一部を歩いたことになります。このイングランド・コースト・パスが全開通すると、総距離4500キロ。ウェールズは2012年に、一足先に1400キロ全開通しており、それと合わせると計5900キロとなり、世界一長い海岸線トレイルとなります。海岸線といっても、砂浜ばかりではなく、今回のドーバーのような岩石海岸、湿地帯、砂利浜を歩くことも。目の前に広がる海の表情、波によって荒く削られた岩の彫刻、人々と海の暮らしがある風景、波と石がぶつかり合う音、潮の香り漂う風を感じながらの歩きは、山のトレイルとはまたひと味違う、五感を刺激する独特の面白さがあります。新鮮な魚介料理がいただけることも、進む足をさらに加速させます。 生い茂る草と蒸し暑さの中登り続ける。ああ、しんどい  崖歩きは、山歩きのような蛇行した道ではなく、想像以上に急なアップダウンがあります。今回も少し憂鬱な気持ちで、草で覆い隠された道を上がって行きました。日陰らしい日陰もなく、直接太陽が頭の上を照りつけ、早速ムシ暑さで汗が一気に出てきます。涼しい潮風はどこへ?と思いながらしばらく登り続けると、視界がパッと広がり瑠璃色の海が果てしなく続き、空と混じり合っていました。私が慣れ親しんでいるエセックスの湿地帯が続く海岸線とは明らかに違い、スケール感があり思わず「きれーい!!」と声を上げてしまいました。ロンドンからそう遠くない場所に、青い海があることにびっくりです。下を覗くと、白亜岩壁をぶち抜いたトンネルに電車がちょうど入っていき、さらにテンションアップです。 チョークの崖をくぐり抜け走る電車が見えた。車窓から眺める海もまたひと味違うのかな・・などと想像してみる 過去と現在が交差する。青年たちは何を思いながら飛び立ったのか。想像計り知れない。バトル・オブ・ブリテン記念館にて  崖の上に立ち、広がる平野を見ながらホッと一息。潮風で涼みながらさらに進むと、突如整備された広場が現れました。はじめ何の施設は分からず進むと、大きな男性が座っている像があり、その奥に名前が刻まれた黒い石碑。ここが第二次世界大戦、ドイツ空軍と英国空軍が最大の航空戦を繰り広げた「バトル・オブ・ブリテン」で勇敢に戦った兵士たちを追悼する場であることが、のちにわかりました。美しい海の上で、悲しい涙が多く降ったのかと思うと心が痛みます。英国連邦諸国であったカナダから参戦した人もいて、ジルちゃんも神妙な面持ち。この土地が持つ運命を感じずにはいられませんでした。 明るく美しい風景とは対照的な暗い過去が、そこにはあった アボッツ・クリフ(Abbots Cliff)。崖ぎりぎりのところを歩き、スリル満点。後ろにある家は昔、密輸入業者を上から見張る場だったそう。地元の小さな歴史を知ると、なぜだかその地に情が湧いてくる  さらに歩を進めていきます。崖の上は、思いの外、野生動植物が豊富で、野生ランも咲いていました。ハヤブサの一種であるチョウゲンボウが、時々崖の上をホバリングしながら、餌を探している姿が見えます。農場では、トラクターが、急斜面をアップダウンしながら干し草を収穫していき、放牧された馬や羊たちはのんびり草を頬張る。その農地を割るかのように高速道路が敷かれていて、船への搭乗を待つ巨大トラックが、長蛇の列を作っていき、その先にはクレーンが並ぶ港町ドーバーが、見えてきました。田舎の明るくノホホンとした風景と産業的で忙しない港の姿。まるで現代社会を凝縮したかのようなこの眺めは、この土地ならではと感じます。 海と牧草。港と巨大トラックの列。白亜のステージには、2つの異なる世界が共存していた シェイクスピア・クリフ(Shakespeare Cliff)と呼ばれるこの崖の下にある浜から、ドーバー海峡横断泳者たちは、スタートする。海峡横断泳協会に正式に登録し、記録を残さないと挑戦できない。成功者は、現段階で2199名。 ドーバーは、ナショナル・トレイルNorth Downs Way、England Coast Pathだけでなく、欧州大陸に続くEuropean long-distance pathsのE2とE9のルートでもある。ロングトレイルでも、重要な拠点 夏休み前だが、家族や友人たちと歩く人々が、ちらほら ドーバーの街並み。丘の上には、守りの城ドーバー城が見える。ローマ人時代すでに、要塞港として使われ続け、今も人とモノの行き来を監視し続けている 世界的に有名な英国人グリフィティ・アーティスト、バンクシーの作品。ドーバーの街中で見ると、EU 離脱のリアリティーが増し、どこか寂しさが込み上げてくる チャンネルスイマーたちのパブ、The White Horse。店内の壁・天井一面に、スイマーたちのサインが書かれている。ジルちゃんは、ここに自分の処女作を置いてきた 海沿いを歩くなら、やっぱり新鮮な魚介類を食するのは、外せない  ドーバーの街に入り、腹ごしらえを兼ねて、チェンネルスイマーたちが集うパブ、The White Horseへ。パブに入ると壁や天井一面に書かれたスイマーたちのサインが、目に飛び込んできます。ジルちゃんの小説には、このパブが登場します。去る前に、オーナーに一冊本をプレゼントし、記念撮影。さっそくみなに宣伝してくれるそうです。多くの人々に作品が読まれたらいいなと思います。 家の至近距離に、白い崖が・・・。地震大国日本では、あまり見られない光景かと 左を向けば、コンクリートで人工的に作られた港、左を向けば、蝶が野花の中を飛び回る自然保護区。何とも不思議な風景  お腹が満たされると眠気が襲い、足が急に重くなります。だらーんとしながら少しつづ先へと進みます。街中を通り抜けて、また白い崖の上へと登ります。ここからは、ナショナル・トラストが管理するThe White Cliffs of Doverになります。海を見ながら、岸壁の上を歩いたり、ティールームやビジター・センターでお茶をしたりできる自然と第二次世界大戦時中に兵士たちが住んでいたシェルターなどの歴史にも触れられます。ここは、観光地として有名であるため、今まで歩いてきた道とは違い、車椅子でも訪問できるようきれいに整備されており、この日は乳母車を引く家族や海外観光客が多く歩いていました。同じドーバーでも歩いてきた西側とは確実に雰囲気が違います。 白くて可愛らしい灯台が黄金の麦と青い空を繋いでいた  海の向こうには、フランスがはっきりと見えており、ドーバーと同じ白亜岩壁に驚きました。昔陸で繋がっていたことがよくわかります。突如、携帯がピピット鳴り「フランスへようこそ。ここからは、フランスの携帯会社がご案内させていただきます。」とメッセージが届き、さらに驚きました。なんだか、人間の作る国境って、なんだろう。よくわからないなと考えてしまいました。 ジルちゃんの処女作"The Last Wave"。表紙の絵にも使われているドーバーのホワイト・クリフにて記念撮影 この瞬間のために、歩くと言っても過言ではない。© Gillian Best  日照時間が長い6月とはいえ、だんだん暗くなり始め、足もさすがに疲れてきたころに、ようやくゴールのセント・マーガレット・ベイにあるパブ、Coastguardに到着。這うようにバーに行き、恒例の地元ビールで、乾杯。今日一日の旅の疲れを癒しました。その後、タクシーでフォルクストンまで帰る道中、トルコ人の運転手さんが、カナダ人と日本人のコンビが、ここで何をしてきたのか聞くので、ずっとここまで歩いて来たことを話すと驚いていました。確かにかなりの距離があることが車で走っていてもわかります。運ちゃんの「よく歩くね」とでも言いたい不思議そうな顔が印象的でした。 やはり海に行ったら、水には触りたい。セント・マーガレット・ベイにて 10th June 2017, Sat...

 二日目:前日の天気とは打って変わってピーカン照り。ようやくリゾートの夏が味わえそうな陽気に心は踊りますが、11マイル(17.5キロ)を歩いた翌日ということで、足がだるだるで痛い。ということで、体を伸ばす程度の軽い歩きになりました。昨日と同じスタート地点のトーキーから、今度は逆に東へ進みババコン(Babacombe)というビーチまでランぶら歩き。トーキーの街中から、別荘地が並ぶ高級住宅街がある丘へと登り始めました。途中にあるベンチに腰掛け、一服しながら広がる海辺の景色をボーと見つめる。また、ちょっと進む。その繰り返し。老夫婦の朝の散歩といった感じで、だらだらのんびり歩くのも、贅沢な時間の過ごし方で、それはそれでとてもいい。 [osmap centre="SX9260964273" zoom="6.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/SWCP-_-Torquay-to-Babbacombe.gpx" markers="SX9146463468!red;出発点: トーキー|SX9240465733!green;終着点: ババコン"] [osmap_marker color=red] 出発点: トーキー [osmap_marker color=green] 終着点: ババコン ようやくリゾートの夏らしい風景に出会う。ミードフット・ビーチ(Meadfoot Beach)にて  昨日歩いたベリー・ヘッドが、湾の向こう側にはっきりと見えてきました。4億年前に誕生した大陸の一部が目の前に存在することの不思議さを改めて感じます。4億年という時空が、自分の想像をはるかに超えていて、私の小さな脳みそではまったく理解できません。ただ、それを証明する塊と自分が対面している、なんだか奇跡的なことに思えくるのです。旅は、こうゆう奇跡の連続で、だからワクワクするものなのでしょうか。 昨日歩いたベリー・ヘッドが海の向こうにお目見え  天気の影響もあり、トレイルは、犬を散歩するひとたちが、とても多くいました。愛犬と一緒に歩ける道がそこかしこにある。これもまた、英国のフットパスの魅力のひとつ。そして、犬が集まりやすい広場やトレイル出入り口には、犬のフン専門のゴミ箱が設置されている。犬にとっても快適な道作りがこの国にはあるようです。ビーチでは、泳いでいたり、カヤック、ボート、スキューバーダイビングなどのマリーンスポーツを楽しむ人々で賑わっていました。英国の夏は、日本より短いです。貴重な時間を存分に楽しむぞという気合いが人々からは感じられます。しかし、英国のシーサイドはどこも、北国独特の哀愁のようなものが漂っており、夏の終わりが近づく寂しさも重なり、なんとなくブルーな雰囲気があります。カリフォルニアやハワイのようなスカッとする爽快さも垢抜けた感じもなく、産業革命で花開いたヴィクトリア朝のリゾート開発の面影がどこかに残っていて、カナダ人と日本人のふたりには、ちょっと不思議に感じ取れます。  そうこうしているうちに、ホープス・ノーズ(Hope's Nose)と名付けられた岬の上に出てきました。ここも、昨日訪ねたベリー・ヘッド同様デヴォン紀の石灰岩がむき出しになっている場所で、その時代に生息していた証となる珊瑚、三葉虫、二枚貝などの化石が多く発見されている場所です。今回は時間がなく、海岸まで降りませんでしたが、岩の中に埋もれている化石を探すのも、きっと面白いと思います(ここはSSSI保護区*1のため、発掘は禁止されています)。 60マイル先のウェイマスまで、はっきりと見える。ここが、世界自然遺産に登録されているジュラシック・コースト(ドーセットと東デヴォンの海岸) 本来のコースが崩落し修理のためクローズ。親切に、仮のルートへ行くよう看板が教えてくれる  夏が燃え尽きるかのように強い日差し。カラッと乾いた風が、潮の匂いを運んできてくれる、とても心地いい日曜の午後。東へ60マイル(96.5キロ)、ドーセット州にあるウェイマスまで伸びていく海岸線がくっきりと、岬の上から見えます。この上をサウス・ウエスト・コースト・パスが一本で繋がっています。近い将来、私が住んでいる南東部のエセックス州を通り、北へとその道は続くことになります。なんとも遠大なプロジェクトです。この海岸線沿いに歩道を通すだけでも大仕事なのに、さらに大変なのがそれをキープしていくことのようで、浸食や嵐で道が崩れたり、丸ごと失うこともあるのが、コースト・パス。特にデヴォン州、コーンウォール州は、大西洋の荒波と風が直にぶつかるところであるため、リスクが大きいようです。今回歩いたルートの一部も、2014年2月の嵐による大波で崩落し、2016年9月現在でも、まだ通常ルートが開通できない状態が続いています。 オディコン・ビーチ。その向こうに、地滑りを起こしたペルム紀の新赤色砂石と、その奥に、デヴォン紀の石灰岩。まったく色が違う レトロなケーブルカー。とてもかわいい  4時間半ほど歩いて、ババコンのビーチに降りてきました。デヴォンの夏はこれを食べなきゃ終わらない。ということで、濃厚なデヴォンアイスクリームを買い、食べながら最後のお楽しみ、ババコン・クリフ・レールウェイ(Babbacombe Cliff Railway)という、崖を一気に上がるケーブルカー乗り場へと向かいました。このケールブカーは、1926年に建設されたもので、レトロな車体がとてもキュート。2005年に廃線の危機に見舞われましたが、地元民が立ち上がり、日本で今注目せれている株式有限責任会社という形で、運営を続けることができました。早速乗り込むと、ブギーボードの3人娘、大きな麦わら帽子に小綺麗な身なりのご婦人たち、水着姿の子供を連れているファミリー、ウォーキングブーツを履いたシニア夫婦など、多種多様な人々で箱は埋め尽くされました。ギシギシと少し不安になるような音を立ててゆっくり上がっていきます。ババコンのすぐ隣にあるブルー・フラッグに認証されているオディコン・ビーチでは、多くの人たちがくつろぐ姿が見えます。そして、そのビーチの向こう側には、ペルム紀の新赤色砂岩の崖があり、そのすぐ隣に、デヴォン紀の石灰岩が突き出しています。しかも、新赤色砂岩は、2013年に地滑りを起こし、海へと雪崩込んでいます。どうやら一軒の家が流れてしまったようで、立ち入り禁止になっています。家主はお気の毒ですが、大昔の大地が、未だに呼吸し生き続け日々変化していく事実に驚愕し、とても新鮮に感じられ心惹かれます。ぜひ、一度この地域で地層を見て回るフィールドツアーに参加してみたい。理解するには、少し勉強しないとですけど・・・。 ナショナル・トレイルのどんぐりマークが、あちらこちらに現れる。まるで宝探しのよう この辺りを歩いて一周回るコースの案内看板。なぜここが世界の地学において大切なエリアなのか、人々に伝えて理解してもらうことがとても大切  こうして、凸凹コンビの2016年の夏は、終わりました。歩いて回ると、どうしてこの地域がユネスコ・世界ジオバークに認定されているのかが、よくわかります。全く知識のなかった私にも、何気なく置かれた資料やポイントごとにある地層の説明看板によって、地学の世界をちょっとだけ覗き見ることができました。それは、巨大な博物館を歩き回るようで、壮大なロマンが地の奥深くにあります。そして、まったく地学に無関心だった私の興味を引いたということ、それが世界ジオバークに認定された目的なのだと思います。 11th September 2016, Sun @ South West Coast Path (Torquay - Babbacombe), Devon トレイル情報: サウス・ウエスト・コースト・パス オフィシャルサイト イングリッシュ・リベイラ・グローバル・ジオパーク オフィシャルサイト ユネスコ・世界ジオーパーク デヴォン州南部トーベイ オフィシャルサイト Walks Along the South West Coast Path: Exmouth to Dartmouth (Coastal Publishing, 2011) South West Coast Path: Falmouth to Exmouth: National Trail Guide (Aurum Press, 2015) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

 今から、約4億1600万年前から約3億5920万年前。生命が地球上に誕生したのちに、魚を含め多くの生物が海洋で生息していました。その後大陸変動で山脈が現れ、雨が降るようになった大陸に河川や湖沼が形成され、シダ植物が繁栄し、種子植物が出現しました。淡水にも魚が進出し、動物が徐々に陸地へ移動していきます。この時代を、地質年代上では、デヴォン紀(Devonian period)と言うそうです。 [osmap markers="SX9260263635!red;トーキー" zoom="0"][osmap_marker color=red] トーキー  カナダ人のジルちゃんと日本人の私がいく凸凹コンビの旅。今回の舞台は、このデヴォン紀の名前の由来となっている、英国南西部のデヴォン州。海が見たいというジルちゃんのリクエストに答えて、海岸線沿いにある道、サウス・ウエスト・コースト・パス(South West Coast Path)を歩いてきました。この道は、ナショナル・トレイル(イングランド・ウェールス代表格のロングトレイル)の中で一番最長の630マイル(1014キロ)になり、コーンウォール、サマーセット、ドーセット州にも続いています。そして今、このコースをさらに延長させ、2020年までにイングランドすべての海岸線を歩けるイングランド・コースト・パス計画が着々と進められている最中です。今回はこの元祖・海岸沿いトレイル、サウス・ウエスト・コースト・パスの一部で、ユネスコ・世界ジオーパークに登録されているデヴォン州南部のトーベイを拠点に歩きました。 地球の歴史を知ることができる貴重なエリア。摩訶不思議な岩がそこかしこにある。歩いて見るのが一番最適で、地学の知識があれば、きっと面白いこと間違いなし。 海岸歩きの醍醐味は、船に乗り、海からも景気が見ることができ、二倍楽しめること。  デヴォン州は、海の美しさから人気のリゾート地であり、温暖で過ごしやすい気候のため、英国人が退職したら住みたいエリアのひとつとして有名です。英国文化のアフタヌーン・ティーで一番人気のクリーム・ティー(スコーン、ジャム、クロテッドクリーム、紅茶のセット)発祥の地であり、酪農が盛んなところでもあります。また、地質学では「魚の時代」と言われたデヴォン紀の名前の由来となる地層が発見され、多くの魚貝類の化石が出土されている大変重要な拠点でもあります。トーベイは、そんなデヴォン要素がぎゅっと凝縮された地で、「イングランドのリベイラ」とヴィクトリア時代から称される景勝地です。一日目は、このトーベイの中心地であるトーキーから漁師町のブリックサムへ船で渡り、西へ向かって歩きキングスウェアへ。二日目は、逆に東へ進みババコンにあるビーチまでランぶら歩き。晩夏の強い日差しが、これでもかと肌に刺さる中、優雅なリゾート地の雰囲気とは正反対、シャツの袖を肩まで捲り上げ、「あっちー!!」と叫びながら、汗だくだくの旅となりました。 [osmap centre="SX9020253960" zoom="5.00" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/SWC-Path-Brixham-to-Kingswear-new.gpx" markers="SX9314256659!red;出発点: ブリックサム|SX8817251174!green;終着点: キングスウェア"] [osmap_marker color=red] 出発点: ブリックサム [osmap_marker color=green] 終着点: キングスウェア ブリックサムの港には、ヨットから漁船まで多くの船が停泊していた。  一日目:前日大雨が通過したトーベイは、まだどんより曇り空で、少し肌寒い朝を迎えました。船が出るのか心配しましたが、無事にトーキーを出航。波に侵食された新赤色砂岩と言われる真っ赤な岩壁が続く上に、リゾート地特有の鮮やかな白やクリーム色の建造物群が立ち並び、絶妙なコントラストを彩ります。この新赤色砂岩は、2億8000万年前ごろのペルム紀に形成されたもので、この辺りの大地は、今よりもっと南にあり、サハラ砂漠のような温暖で乾燥した土地であったことを証明しているのだとか。だからでしょうか、海からボーと眺めていると、この土地が醸し出す独特の異国のような雰囲気が、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる、なんとも不思議な感覚を覚えます。 ベリー・ヘッドにある要塞跡。壁の向こう側には昔、石灰岩の採掘場があり、今は海鳥たちの営巣地になっている。岬から、今来たトーベイ全体が見渡せる。 4億年前から、常に変化し続けるベリー・ヘッド  あっという間に、ブリックサムの港に到着。17世紀に名誉革命で即位したオランダ総督ウィリアム3世の銅像が、お出迎えしてくれました。オランダ軍を率いてこの港に、私たちと同じように上陸したそうです。観光客で賑わう町をあとに、ナポレオン戦争時代の要塞があるベリー・ヘッド(Berry Head)という岬へと向かいます。ここは、先ほど船から見えていた赤色砂岩とは全く違う、デボン紀の石灰岩でできていて、うっすらピンク色がかったグレーの岩壁がのぞいています。1969年まで約300年間、石灰岩の採掘場があり、地元の大きな産業のひとつとなっていました。その跡地は今、海鳥たちの営巣地になっており、約500種ぐらいの野草が生息する自然保護区に指定されてる場所です。海にはハンドウイルカやウバザメが遊びに来るようです。岬の上にでると、そこには息をのむ光景が広がっていました。天気はすっかり晴天となり、荒々しく削られ複雑なカーブを描く海岸線、ターコイズブルーの海がますます美しさとダイナミックさを強調させていきます。そして、陸にはアウトラインのように見える垣根に囲まれ、パッチワーク模様を描く田園が続いています。長い年月をかけて形成された大自然と人間の営みが見事に重なり合う、まさにこれぞイングリッシュ・カントリーサイドといいましょうか、とてもプリティー。 トレイルに何気なく置かれていた女神像。見守るように海を眺めていた。地元の人が制作したのか、愛を感じる 地元のポランティアが、積極的に道の整備をしているようで、とてもよく整備されていて、歩きやすい 放牧している家畜が逃げないよう、人(または犬)だけが通れるスタイル(stile)と呼ばれる踏み越し台。デボン紀の石灰岩で作られているであろう、立派なもの。雨に濡れて、少し赤みを帯びている  感動の余韻に浸りながらも、まだ先は長いぞと進むことにしました。気温が上がり、雨が染み込んだ大地からモヤーとした湿気が上昇してくるのを足で感じながら、切り立った岩壁の上を歩いて行きます。潮風に吹かれながら爽やかで、軽やかな歩きを想像していた私たち。ところがどっこい。今まで経験してきたぶらぶら、だらだら歩きとは明らかに違い、かなり本格的な山登りのような砂利道を、上がったり、下がったりの繰り返し。山道はまだ蛇行していますが、ここはまっすぐ上がり、まっすぐ降りる。かなりキツい!息が上がり、汗が一気に噴き出してきました。さらにデヴォンの海岸線歩きは、ハードな登り下りだけでなく、大きく湾曲している道を行くので、距離と時間も読みづらい。次のポイントは目の前に見えているのに、くねくねとカーブした道を進むので、前進しているようで、していないような・・・。おいおい、こんなにしんどいとは、聞いてねーぞ。ふたりの顔に笑顔が消え始めたころ、砂浜に降りてきました。間髪を容れず、リュックと靴を投げ出し、汗でまとわりつく靴下にイライラしながらも、ダッシュで海に入り、蒸れた足を大西洋の冷たい水に浸しました。今まで縮こまっていた細胞ひとつひとつが解放されるかのように、疲れた足が徐々に癒されていきます。なんともいえない気持ち良さ。水着を持参していたらきっと泳いでいたはず。 まるでプライベートビーチのような、波の音だけが聞こえる落ち着いた空間。ぜひとも次回は泳いでみたい 後半になると、疲れからペースは落ちてきたが、ちょっとしたウォーキング・ハイになり、足を止められない おなじみナショナル・トレイルのどんぐりマーク。これを見ると安心する 途中野生ランを発見。日本のハクサンチドリに似ている  リフレッシュしたので、靴を履き、再度歩き出す。こんなに長く海辺を歩くのは、人生で初めて。右側に陸、左側に海が映し出される景色の真ん中を裂くかのように、歩き続ける。右に放牧された牛が急斜面を物ともせず、4本の足でしっかり踏ん張りながら、ひたすら草をむしり食べている時、左ではポイントを目指し、スキューバーダイバーたちを乗せた船が、波を切りながら走っていく。こんな二つの全く違う世界を見渡せることができるのは、海岸沿いトレイルの面白いところではないでしょうか。グループ、カップルで歩いているひとやトレイルランニングするひとなど、お互い邪魔しないよい距離間で進む様子が見られました。十代の女の子二人で何気なく話をしながら、ぶらぶらしているのにも遭遇。きっと近くに住んでいるのでしょう。逆に、私たちのような、わざわざ遠くから歩きに来ているひとたちや、ホリデーできたひとたちが、ちょっと歩いて海岸線を散策している様子もうかがえました。 西日に照らされた岩壁もまた趣深い。歩いてきた甲斐がある  デヴォンの主要産業のひとつは、観光業です。年間7億6500万ポンド(約1165億円)*1の収益をもたらします。そのために、PRや情報発信に力を入れるだけでなく、自治体、博物館などの教育施設、宿泊施設、船を含む公共交通機関などの連携も強化されており、観光客に安心して楽しめる工夫と多くのオプションを提供しています。特にウォーカーやサイクリスト誘致を強化し、1、2時間のショートコースから、丸一日かけて巡るような長いものまで、実に多くのルートを観光案内所でも、ウェブでも提供していて、力の入れようが伝わってきます。ただのリゾートホリデー客と違い、ウォーカーやサイクリストたちは、よいリピーターになってくれる可能性が高いからなのかと推測します。その努力の甲斐あってか、ここ最近は、デヴォン州を含む南西部への国内ビジター数は、ロンドンを訪れる数を上回っています*2。旅行目的が以前のような観光名所回りから自然観察へと変化してきていることも*3、数を増やしている要因と考えます。  残り三分の一まで来ると、ベリー・ヘッドから歩いて来た海岸線は完全に隠れ、終着点のキングスウエアがあるダート川へと続く沿岸を進んで行きます。西日に照らされ暑さは一向に引かず、残りの水も少なくなり始め、疲れから足取りもスピードが落ち始めてきました。それでも、この先にあるであろう別世界に期待しながら、ふたりとも足を止めることはありませんでした。何も話さず黙々と歩く。暑さと疲れで脳が働かず、空っぽで動き続けると、ちょっとした擬似瞑想状態になり、ウォーキング・ハイになってきます。それもまた心地よいものです。けしてエベレストの頂上を目指しているわけでも、アマゾンのジャンクルを探検しているわけでもない、スケールはとてもとても小さなものではありますが、それでも自分と自然が一体化していき、どこかで時空を超えながら地球を感じ始めています。 ブラウンストーンの砲台。第二次世界大戦時の1940年に、ドイツ軍が海から上陸するのを阻止するために作られた軍事防衛施設 大砲をこのレールで運搬していたそう。今はその上を歩くトレイルコースの一部となっている  途中、ナショナル・トラストが管理しているエリアに入ると、ダートムーア・ポニーが放牧されていました。とても小柄で、雨風に強いスタミナがあるこの小型の馬は、このあたりで長年作業馬として活躍してきましたが、時代の流れとともに数を減らし、今はデヴォンにある国立公園のひとつ、ダートムーアに、ほぼ野生の状態で放牧されながら保護されています。その親しみやすい姿に、思わず笑顔がこぼれます。さらに進むと、ブラウンストーン・バッテリー(Brownstone Battery)と言われる砲台跡が現れました。第二次世界大戦時に、ドイツ軍が海から上陸するのを阻止するために作られた防衛施設ですが、実戦で使用することはありませんでした。とはいえ、ガランとした砲台の建物や錆びついたレールを見ると、とても生々しい。目の前に広がる穏やかな海の雰囲気とは交わることがない、異様な光景です。しかし、これもこの地域の歴史であることには違いない。今は、ナショナル・トラストによって大切に保管されている国の遺産です。  やっとの思いでキングスウエアにたどり着きました。地元の人たちがサッカーの試合中継を楽しんでいるパブへ直行。地元エール・ビール抱えて外へ。道の向かいにある低い壁にパイントグラスを置き、靴を脱いで裸足になり、体を壁の上から投げ出し、川の向こう岸に見えるダートマスの街並みを眺め、ぐびぐびと飲むビールは、二人の体を達成感で満たしてくれます。 ダート川の河口付近。海の交通と防衛の要所として長い間占めてきた  バスに乗り宿へ戻る道中、若い男性ひとりが、我々に話しかけてきました。明らかに地元の人間でもなく英国人でもない女性ふたりが、ここで何をしているか不思議に思ったのでしょう。ブリックサムから海沿いを歩いてきたことを話すと、男性もよくこの辺りを歩くようで、話が盛り上がりました。「僕は、以前陸軍に所属していて、世界各国を駐在してきたあと、ここに戻ってきたとき、いかに自分が美しいところにいたのかを実感したんだ。でも、地元の人たちは、文句ばかりこぼし、どれだけ素晴らしい環境にいるのか気がついていない人たちがほとんど。君たちが歩いて来た道の存在すらも知らないひとも多い。実にもったいないと思うよ。」灯台下暗し。案外地元のひとたちにとっては、そんなものなのかもしれません。時間やお金をかけなくとも、意外と身近に心奪われるような景観はあるものです。ただ、歩くことを忘れかけている私たちは、そのことに気がついていないのかもしれない。そんなふうに思いました。  今回の旅は、目の前の風景を楽しむだけでなく、その奥深くにある時間の経過をも理解する、よい機会となりました。人の歴史だけでなく、なぜここにこのような地形ができたのか、なぜその動植物が生息するようになったのか、自分の視野を少し広げてくれたように感じます。パノラマ風景が目に入った一瞬に、太古から現代まで駆け巡り、時の流れを感じる。自分がまるでタイムトラベラーになったようで、ちょっと興奮します。そして、自分の足で回ることで、知らなかった英国の姿を発見した瞬間、ジワーと何か暖かいものが体に広がり感動している自分がいます。いつもは、へんてこな国だなと思う英国に対して、愛情と親しみが少し湧いてくるのです。これが癖になってやめられない!! *二日目のリポートは、こちら >> 10th September 2016, Sat @ South West Coast Path (Torquay - Kingswear), Devon 参照: *1 Regional Factsheets 2015, Visit England *2 England Domestic Overnight Trips Summary - Holidays - 2016, Visit England *3 The Value of Activities for Tourism, Visit England トレイル情報: サウス・ウエスト・コースト・パス オフィシャルサイト イングリッシュ・リベイラ・グローバル・ジオパーク オフィシャルサイト ユネスコ・世界ジオーパーク デヴォン州南部トーベイ オフィシャルサイト Walks Along the...

西から来たカナダ人のジルちゃん。東から来た日本人の私。約10年前に英国の大学で出会ったふたりは、卒業後それぞれの道に進みながらも英国で暮らし、今でも家族同然のように付き合いをしています。会うたびに「この国、変じゃねぇー」と、理解できない異文化について語りながら、お酒を飲むのがお決まりです。しかし、文句を言いながらも、どこか愛情を抱いてしまう不思議なこの国。そしてある日、このワンダーランドをあちこち一緒にぶらぶらして、知らなかった新たな一面を発見したいと旅が始まりました。どこそこのトレイルを踏破しようとか、あの山登ろうとか、あそこまで歩こうといったノリは一切なく、ぐうたらなふたりらしい、天気と気分次第で歩くゆるゆる旅です。 [osmap gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/10/Thames-Path-Pitney-to-Richmond.gpx" markers="TQ2451875884!red;出発点: パトニー・ブリッジ|TQ17847444!green;終着点: リッチモンド"] [osmap_marker color=red] 出発点: パトニー・ブリッジ [osmap_marker color=green] 終着点: リッチモンド こちらは、コーチが檄を飛ばすボート  今回は、英国の代表格ナショナル・トレイルのひとつである、テムズ・パス(Thames Path)の一部をランぶら歩きしてみました。テムズ・パスは、ロンドン中心部を流れるテムズ川に沿って歩く計184マイル(296キロ)の道です。イングランド南西部コッツウォルズ地方にある水源地から、オックスフォード、音楽フェスがあるレティング、エリザベス女王が住む城があるウィンザー、パンプトン・コート宮殿、キュー王立植物園、国会議事堂・ビックベン、タワーブリッジ、本初子午線があるグリニッジを通過しながら、テムズ・バリアーと呼ばれる川の障壁までのコースになります。ナショナル・トレイルのなかでも、高低差がないので、私たちのようながんばらないひとたち向きです。本日のコースは、ロンドン西南部にあるパトニー・ブリッジからキュー王立植物園脇を通り、リッチモンドまでの10マイル(約16キロ)になります。川の流れとは逆に歩いて行く、ちょっと肌寒くなってきた秋の紅葉狩りとなりました。 こちらは、コーチが檄を飛ばすボート  お天気は、あいにくの曇り。でもこのグレー色が、ロンドンぽいかも。そんな天気の中でもロンドンっ子たちは、散歩したり、チャリ乗ったり、ジョギングしたりと元気です。川には、ボートが次々と運び出されていました。ここは、毎年4月に行われるオックスフォード大 vs ケンブリッジ大で競われる伝統のボートレースが開催されるエリアで、次の試合に向けて練習しているようです。 昔サッカー日本代表の稲本潤一選手が所属していたフラムFCの本拠地・クレイヴン・コテージが見える  ジルちゃんは、長年勤めたロンドンでの仕事を辞めて、ブリストルに移り新たな生活をスタートさせます。今回の旅は、慣れ親しんだロンドンを離れる前に、一度自分の知らないロンドンを見てみたい。そんな彼女の思いがありました。 緑と金色が美しいハマースミス橋。橋のデザインを見て歩くだけでも、面白い そのハマースミス橋の下を通るランナー。頭、気をつけて!!  川近くまで、ちょっと降りてみた。石がゴロゴロ 途中水近くまで降りてみました。ロンドン中心部あたりだと砂がメインなのに対して、この辺りになると石がゴロゴロ。多少上流に上ってきているんだなとわかります。川幅も徐々に狭くなり始めました。 手を繋ぐカップル。年なんて関係ない!! 若者だって紅葉狩り 川沿いの大きな木々が、色とりどりのアーチを作り出している 川沿いでは、紅、黄、緑に染まった木々の中、週末のひと時を夫婦や仲間と散歩しながらのんびり過ごす姿がありました。今回は本格的な装備をしたハイカーは見かけず、手ぶらで散策しているひとたちが多かったです。たぶん地元のひとたちでしょう。ジョギングしているひとたちは、若いバリバリのビジネスマン&ビジネスウーマンたちが中心で、仕事もプライベートも充実させています!と言わんばかりのパワフルさ。スポーツファッションに身を固め、落ち葉を蹴りながら颯爽と走り抜けていく姿が、散歩族とは対照的でした。トレイルの一部はサイクリングも可能で、20代から50代の男性中心に、フル装備でロードレーサーに跨り、結構なスピードで走っていきます。ボーとしている我々ふたりは、何回もチャリンチャリーンとベルで警告され、慌てて避けていました。 ナショナル・トレイルとしてスルー・ハイカーが歩く道であり、地元のひとたちがふらっと歩く道でもあるテムズ・パス。その上、ジョギングやサイクリングする人たちも加わり、それぞれの目的で好きなように利用している。道は、人々に使われてこそ道になり得るんだと、「道」の存在というものを観察しながら考えていました。 りっぱな標識。重厚感があります 昼食後の散歩か、仲間同士四季を楽しむ 英国の紅葉は、日本とは違った趣があります 水上では、若者が檄を飛ばされながら、必死にボートを漕ぐ姿が。女性チームもいました。「寒そうだし、鼻水垂れそうだし、きつそー。絶対にヤダ!!」「あっ、でもあれ見て。あのボートに座っている女性なら、私にもできそう」などとふたりで、歩きながら冷やかしていました。 サギが見守る中、ボートの猛特訓。寒くないの!? ダッチ・バージと呼ばれているオランダ版はしけ。遊覧用であったり、運河などでは住居として使用されている 大英帝国時代、ロンドンが貿易の中心地となり、このテムズ川は世界で一番交通量の多い場でした。時代が変わり、交通路としての役目をほぼ終えて、今はレジャー目的の船が、行き来しています。最新式のクルーザーもあれば、昔の船を改造したものなどもあり、時代は違えど、活気があったテムズ川の面影がうっすら感じられます。トレイル歩き同様、水上でもそれぞれの目的で好きなように遊び、実に楽しそう。こうするべきといった流儀や流行りはなく、みなが公共の場において必要最低限のルールをきちんと守りながら、お互い干渉せず、秋のクルージングを通して四季を謳歌している。我が道を往く英国人らしさが、そこに表れていました。 グッバイ、ロンドン。別れを惜しむ、ジルちゃん  ぶらぶらしているうちに、だんだん道が賑やかになってきました。どうやらリッチモンドに到着したようです。高級住宅街地域のリッチモンドには、ポッシュなお店も沢山あります。買い物帰りのひとたちが秋の夕涼み!?なのでしょうか、人々がお茶やビールを飲んでいたり、川辺に座り話をしていたり、ただぶらついていたり。私たちもビールで乾杯し、ジルちゃんの門出を祝いました。  しょっちゅう見ていたテムズ川ですが、今回ほどこの川をじっくり眺め意識したことはなかったです。というか、川沿いをここまでじっくり時間をかけて歩いたことが初めてで、違う角度で見慣れた風景を見る面白さを発見し、今まで持っていたロンドンのイメージを少し変えたように感じます。ロンドンのシンボルでもあるこの川は、数千年前から人々の暮らしの中にあり、今も変わらず大きな存在であり続けているようです。そして、遠い昔の人たちも歩いたであろう道を辿ることで、僭越ながら私自身もその長い歴史の一部になれたような気がしました。 26th October 2014, Sat @ The Thames Path (Putney Bridge to Richmond), London トレイル情報: デムズ・パス www.nationaltrail.co.uk/thames-path Rhoebe Clapham, Thames Path in London (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...