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 二日目:前日の天気とは打って変わってピーカン照り。ようやくリゾートの夏が味わえそうな陽気に心は踊りますが、11マイル(17.5キロ)を歩いた翌日ということで、足がだるだるで痛い。ということで、体を伸ばす程度の軽い歩きになりました。昨日と同じスタート地点のトーキーから、今度は逆に東へ進みババコン(Babacombe)というビーチまでランぶら歩き。トーキーの街中から、別荘地が並ぶ高級住宅街がある丘へと登り始めました。途中にあるベンチに腰掛け、一服しながら広がる海辺の景色をボーと見つめる。また、ちょっと進む。その繰り返し。老夫婦の朝の散歩といった感じで、だらだらのんびり歩くのも、贅沢な時間の過ごし方で、それはそれでとてもいい。 [osmap centre="SX9260964273" zoom="6.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/SWCP-_-Torquay-to-Babbacombe.gpx" markers="SX9146463468!red;出発点: トーキー|SX9240465733!green;終着点: ババコン"] [osmap_marker color=red] 出発点: トーキー [osmap_marker color=green] 終着点: ババコン ようやくリゾートの夏らしい風景に出会う。ミードフット・ビーチ(Meadfoot Beach)にて  昨日歩いたベリー・ヘッドが、湾の向こう側にはっきりと見えてきました。4億年前に誕生した大陸の一部が目の前に存在することの不思議さを改めて感じます。4億年という時空が、自分の想像をはるかに超えていて、私の小さな脳みそではまったく理解できません。ただ、それを証明する塊と自分が対面している、なんだか奇跡的なことに思えくるのです。旅は、こうゆう奇跡の連続で、だからワクワクするものなのでしょうか。 昨日歩いたベリー・ヘッドが海の向こうにお目見え  天気の影響もあり、トレイルは、犬を散歩するひとたちが、とても多くいました。愛犬と一緒に歩ける道がそこかしこにある。これもまた、英国のフットパスの魅力のひとつ。そして、犬が集まりやすい広場やトレイル出入り口には、犬のフン専門のゴミ箱が設置されている。犬にとっても快適な道作りがこの国にはあるようです。ビーチでは、泳いでいたり、カヤック、ボート、スキューバーダイビングなどのマリーンスポーツを楽しむ人々で賑わっていました。英国の夏は、日本より短いです。貴重な時間を存分に楽しむぞという気合いが人々からは感じられます。しかし、英国のシーサイドはどこも、北国独特の哀愁のようなものが漂っており、夏の終わりが近づく寂しさも重なり、なんとなくブルーな雰囲気があります。カリフォルニアやハワイのようなスカッとする爽快さも垢抜けた感じもなく、産業革命で花開いたヴィクトリア朝のリゾート開発の面影がどこかに残っていて、カナダ人と日本人のふたりには、ちょっと不思議に感じ取れます。  そうこうしているうちに、ホープス・ノーズ(Hope's Nose)と名付けられた岬の上に出てきました。ここも、昨日訪ねたベリー・ヘッド同様デヴォン紀の石灰岩がむき出しになっている場所で、その時代に生息していた証となる珊瑚、三葉虫、二枚貝などの化石が多く発見されている場所です。今回は時間がなく、海岸まで降りませんでしたが、岩の中に埋もれている化石を探すのも、きっと面白いと思います(ここはSSSI保護区*1のため、発掘は禁止されています)。 60マイル先のウェイマスまで、はっきりと見える。ここが、世界自然遺産に登録されているジュラシック・コースト(ドーセットと東デヴォンの海岸) 本来のコースが崩落し修理のためクローズ。親切に、仮のルートへ行くよう看板が教えてくれる  夏が燃え尽きるかのように強い日差し。カラッと乾いた風が、潮の匂いを運んできてくれる、とても心地いい日曜の午後。東へ60マイル(96.5キロ)、ドーセット州にあるウェイマスまで伸びていく海岸線がくっきりと、岬の上から見えます。この上をサウス・ウエスト・コースト・パスが一本で繋がっています。近い将来、私が住んでいる南東部のエセックス州を通り、北へとその道は続くことになります。なんとも遠大なプロジェクトです。この海岸線沿いに歩道を通すだけでも大仕事なのに、さらに大変なのがそれをキープしていくことのようで、浸食や嵐で道が崩れたり、丸ごと失うこともあるのが、コースト・パス。特にデヴォン州、コーンウォール州は、大西洋の荒波と風が直にぶつかるところであるため、リスクが大きいようです。今回歩いたルートの一部も、2014年2月の嵐による大波で崩落し、2016年9月現在でも、まだ通常ルートが開通できない状態が続いています。 オディコン・ビーチ。その向こうに、地滑りを起こしたペルム紀の新赤色砂石と、その奥に、デヴォン紀の石灰岩。まったく色が違う レトロなケーブルカー。とてもかわいい  4時間半ほど歩いて、ババコンのビーチに降りてきました。デヴォンの夏はこれを食べなきゃ終わらない。ということで、濃厚なデヴォンアイスクリームを買い、食べながら最後のお楽しみ、ババコン・クリフ・レールウェイ(Babbacombe Cliff Railway)という、崖を一気に上がるケーブルカー乗り場へと向かいました。このケールブカーは、1926年に建設されたもので、レトロな車体がとてもキュート。2005年に廃線の危機に見舞われましたが、地元民が立ち上がり、日本で今注目せれている株式有限責任会社という形で、運営を続けることができました。早速乗り込むと、ブギーボードの3人娘、大きな麦わら帽子に小綺麗な身なりのご婦人たち、水着姿の子供を連れているファミリー、ウォーキングブーツを履いたシニア夫婦など、多種多様な人々で箱は埋め尽くされました。ギシギシと少し不安になるような音を立ててゆっくり上がっていきます。ババコンのすぐ隣にあるブルー・フラッグに認証されているオディコン・ビーチでは、多くの人たちがくつろぐ姿が見えます。そして、そのビーチの向こう側には、ペルム紀の新赤色砂岩の崖があり、そのすぐ隣に、デヴォン紀の石灰岩が突き出しています。しかも、新赤色砂岩は、2013年に地滑りを起こし、海へと雪崩込んでいます。どうやら一軒の家が流れてしまったようで、立ち入り禁止になっています。家主はお気の毒ですが、大昔の大地が、未だに呼吸し生き続け日々変化していく事実に驚愕し、とても新鮮に感じられ心惹かれます。ぜひ、一度この地域で地層を見て回るフィールドツアーに参加してみたい。理解するには、少し勉強しないとですけど・・・。 ナショナル・トレイルのどんぐりマークが、あちらこちらに現れる。まるで宝探しのよう この辺りを歩いて一周回るコースの案内看板。なぜここが世界の地学において大切なエリアなのか、人々に伝えて理解してもらうことがとても大切  こうして、凸凹コンビの2016年の夏は、終わりました。歩いて回ると、どうしてこの地域がユネスコ・世界ジオバークに認定されているのかが、よくわかります。全く知識のなかった私にも、何気なく置かれた資料やポイントごとにある地層の説明看板によって、地学の世界をちょっとだけ覗き見ることができました。それは、巨大な博物館を歩き回るようで、壮大なロマンが地の奥深くにあります。そして、まったく地学に無関心だった私の興味を引いたということ、それが世界ジオバークに認定された目的なのだと思います。 11th September 2016, Sun @ South West Coast Path (Torquay - Babbacombe), Devon トレイル情報: サウス・ウエスト・コースト・パス オフィシャルサイト イングリッシュ・リベイラ・グローバル・ジオパーク オフィシャルサイト ユネスコ・世界ジオーパーク デヴォン州南部トーベイ オフィシャルサイト Walks Along the South West Coast Path: Exmouth to Dartmouth (Coastal Publishing, 2011) South West Coast Path: Falmouth to Exmouth: National Trail Guide (Aurum Press, 2015) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

 今から、約4億1600万年前から約3億5920万年前。生命が地球上に誕生したのちに、魚を含め多くの生物が海洋で生息していました。その後大陸変動で山脈が現れ、雨が降るようになった大陸に河川や湖沼が形成され、シダ植物が繁栄し、種子植物が出現しました。淡水にも魚が進出し、動物が徐々に陸地へ移動していきます。この時代を、地質年代上では、デヴォン紀(Devonian period)と言うそうです。 [osmap markers="SX9260263635!red;トーキー" zoom="0"][osmap_marker color=red] トーキー  カナダ人のジルちゃんと日本人の私がいく凸凹コンビの旅。今回の舞台は、このデヴォン紀の名前の由来となっている、英国南西部のデヴォン州。海が見たいというジルちゃんのリクエストに答えて、海岸線沿いにある道、サウス・ウエスト・コースト・パス(South West Coast Path)を歩いてきました。この道は、ナショナル・トレイル(イングランド・ウェールス代表格のロングトレイル)の中で一番最長の630マイル(1014キロ)になり、コーンウォール、サマーセット、ドーセット州にも続いています。そして今、このコースをさらに延長させ、2020年までにイングランドすべての海岸線を歩けるイングランド・コースト・パス計画が着々と進められている最中です。今回はこの元祖・海岸沿いトレイル、サウス・ウエスト・コースト・パスの一部で、ユネスコ・世界ジオーパークに登録されているデヴォン州南部のトーベイを拠点に歩きました。 地球の歴史を知ることができる貴重なエリア。摩訶不思議な岩がそこかしこにある。歩いて見るのが一番最適で、地学の知識があれば、きっと面白いこと間違いなし。 海岸歩きの醍醐味は、船に乗り、海からも景気が見ることができ、二倍楽しめること。  デヴォン州は、海の美しさから人気のリゾート地であり、温暖で過ごしやすい気候のため、英国人が退職したら住みたいエリアのひとつとして有名です。英国文化のアフタヌーン・ティーで一番人気のクリーム・ティー(スコーン、ジャム、クロテッドクリーム、紅茶のセット)発祥の地であり、酪農が盛んなところでもあります。また、地質学では「魚の時代」と言われたデヴォン紀の名前の由来となる地層が発見され、多くの魚貝類の化石が出土されている大変重要な拠点でもあります。トーベイは、そんなデヴォン要素がぎゅっと凝縮された地で、「イングランドのリベイラ」とヴィクトリア時代から称される景勝地です。一日目は、このトーベイの中心地であるトーキーから漁師町のブリックサムへ船で渡り、西へ向かって歩きキングスウェアへ。二日目は、逆に東へ進みババコンにあるビーチまでランぶら歩き。晩夏の強い日差しが、これでもかと肌に刺さる中、優雅なリゾート地の雰囲気とは正反対、シャツの袖を肩まで捲り上げ、「あっちー!!」と叫びながら、汗だくだくの旅となりました。 [osmap centre="SX9020253960" zoom="5.00" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/SWC-Path-Brixham-to-Kingswear-new.gpx" markers="SX9314256659!red;出発点: ブリックサム|SX8817251174!green;終着点: キングスウェア"] [osmap_marker color=red] 出発点: ブリックサム [osmap_marker color=green] 終着点: キングスウェア ブリックサムの港には、ヨットから漁船まで多くの船が停泊していた。  一日目:前日大雨が通過したトーベイは、まだどんより曇り空で、少し肌寒い朝を迎えました。船が出るのか心配しましたが、無事にトーキーを出航。波に侵食された新赤色砂岩と言われる真っ赤な岩壁が続く上に、リゾート地特有の鮮やかな白やクリーム色の建造物群が立ち並び、絶妙なコントラストを彩ります。この新赤色砂岩は、2億8000万年前ごろのペルム紀に形成されたもので、この辺りの大地は、今よりもっと南にあり、サハラ砂漠のような温暖で乾燥した土地であったことを証明しているのだとか。だからでしょうか、海からボーと眺めていると、この土地が醸し出す独特の異国のような雰囲気が、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる、なんとも不思議な感覚を覚えます。 ベリー・ヘッドにある要塞跡。壁の向こう側には昔、石灰岩の採掘場があり、今は海鳥たちの営巣地になっている。岬から、今来たトーベイ全体が見渡せる。 4億年前から、常に変化し続けるベリー・ヘッド  あっという間に、ブリックサムの港に到着。17世紀に名誉革命で即位したオランダ総督ウィリアム3世の銅像が、お出迎えしてくれました。オランダ軍を率いてこの港に、私たちと同じように上陸したそうです。観光客で賑わう町をあとに、ナポレオン戦争時代の要塞があるベリー・ヘッド(Berry Head)という岬へと向かいます。ここは、先ほど船から見えていた赤色砂岩とは全く違う、デボン紀の石灰岩でできていて、うっすらピンク色がかったグレーの岩壁がのぞいています。1969年まで約300年間、石灰岩の採掘場があり、地元の大きな産業のひとつとなっていました。その跡地は今、海鳥たちの営巣地になっており、約500種ぐらいの野草が生息する自然保護区に指定されてる場所です。海にはハンドウイルカやウバザメが遊びに来るようです。岬の上にでると、そこには息をのむ光景が広がっていました。天気はすっかり晴天となり、荒々しく削られ複雑なカーブを描く海岸線、ターコイズブルーの海がますます美しさとダイナミックさを強調させていきます。そして、陸にはアウトラインのように見える垣根に囲まれ、パッチワーク模様を描く田園が続いています。長い年月をかけて形成された大自然と人間の営みが見事に重なり合う、まさにこれぞイングリッシュ・カントリーサイドといいましょうか、とてもプリティー。 トレイルに何気なく置かれていた女神像。見守るように海を眺めていた。地元の人が制作したのか、愛を感じる 地元のポランティアが、積極的に道の整備をしているようで、とてもよく整備されていて、歩きやすい 放牧している家畜が逃げないよう、人(または犬)だけが通れるスタイル(stile)と呼ばれる踏み越し台。デボン紀の石灰岩で作られているであろう、立派なもの。雨に濡れて、少し赤みを帯びている  感動の余韻に浸りながらも、まだ先は長いぞと進むことにしました。気温が上がり、雨が染み込んだ大地からモヤーとした湿気が上昇してくるのを足で感じながら、切り立った岩壁の上を歩いて行きます。潮風に吹かれながら爽やかで、軽やかな歩きを想像していた私たち。ところがどっこい。今まで経験してきたぶらぶら、だらだら歩きとは明らかに違い、かなり本格的な山登りのような砂利道を、上がったり、下がったりの繰り返し。山道はまだ蛇行していますが、ここはまっすぐ上がり、まっすぐ降りる。かなりキツい!息が上がり、汗が一気に噴き出してきました。さらにデヴォンの海岸線歩きは、ハードな登り下りだけでなく、大きく湾曲している道を行くので、距離と時間も読みづらい。次のポイントは目の前に見えているのに、くねくねとカーブした道を進むので、前進しているようで、していないような・・・。おいおい、こんなにしんどいとは、聞いてねーぞ。ふたりの顔に笑顔が消え始めたころ、砂浜に降りてきました。間髪を容れず、リュックと靴を投げ出し、汗でまとわりつく靴下にイライラしながらも、ダッシュで海に入り、蒸れた足を大西洋の冷たい水に浸しました。今まで縮こまっていた細胞ひとつひとつが解放されるかのように、疲れた足が徐々に癒されていきます。なんともいえない気持ち良さ。水着を持参していたらきっと泳いでいたはず。 まるでプライベートビーチのような、波の音だけが聞こえる落ち着いた空間。ぜひとも次回は泳いでみたい 後半になると、疲れからペースは落ちてきたが、ちょっとしたウォーキング・ハイになり、足を止められない おなじみナショナル・トレイルのどんぐりマーク。これを見ると安心する 途中野生ランを発見。日本のハクサンチドリに似ている  リフレッシュしたので、靴を履き、再度歩き出す。こんなに長く海辺を歩くのは、人生で初めて。右側に陸、左側に海が映し出される景色の真ん中を裂くかのように、歩き続ける。右に放牧された牛が急斜面を物ともせず、4本の足でしっかり踏ん張りながら、ひたすら草をむしり食べている時、左ではポイントを目指し、スキューバーダイバーたちを乗せた船が、波を切りながら走っていく。こんな二つの全く違う世界を見渡せることができるのは、海岸沿いトレイルの面白いところではないでしょうか。グループ、カップルで歩いているひとやトレイルランニングするひとなど、お互い邪魔しないよい距離間で進む様子が見られました。十代の女の子二人で何気なく話をしながら、ぶらぶらしているのにも遭遇。きっと近くに住んでいるのでしょう。逆に、私たちのような、わざわざ遠くから歩きに来ているひとたちや、ホリデーできたひとたちが、ちょっと歩いて海岸線を散策している様子もうかがえました。 西日に照らされた岩壁もまた趣深い。歩いてきた甲斐がある  デヴォンの主要産業のひとつは、観光業です。年間7億6500万ポンド(約1165億円)*1の収益をもたらします。そのために、PRや情報発信に力を入れるだけでなく、自治体、博物館などの教育施設、宿泊施設、船を含む公共交通機関などの連携も強化されており、観光客に安心して楽しめる工夫と多くのオプションを提供しています。特にウォーカーやサイクリスト誘致を強化し、1、2時間のショートコースから、丸一日かけて巡るような長いものまで、実に多くのルートを観光案内所でも、ウェブでも提供していて、力の入れようが伝わってきます。ただのリゾートホリデー客と違い、ウォーカーやサイクリストたちは、よいリピーターになってくれる可能性が高いからなのかと推測します。その努力の甲斐あってか、ここ最近は、デヴォン州を含む南西部への国内ビジター数は、ロンドンを訪れる数を上回っています*2。旅行目的が以前のような観光名所回りから自然観察へと変化してきていることも*3、数を増やしている要因と考えます。  残り三分の一まで来ると、ベリー・ヘッドから歩いて来た海岸線は完全に隠れ、終着点のキングスウエアがあるダート川へと続く沿岸を進んで行きます。西日に照らされ暑さは一向に引かず、残りの水も少なくなり始め、疲れから足取りもスピードが落ち始めてきました。それでも、この先にあるであろう別世界に期待しながら、ふたりとも足を止めることはありませんでした。何も話さず黙々と歩く。暑さと疲れで脳が働かず、空っぽで動き続けると、ちょっとした擬似瞑想状態になり、ウォーキング・ハイになってきます。それもまた心地よいものです。けしてエベレストの頂上を目指しているわけでも、アマゾンのジャンクルを探検しているわけでもない、スケールはとてもとても小さなものではありますが、それでも自分と自然が一体化していき、どこかで時空を超えながら地球を感じ始めています。 ブラウンストーンの砲台。第二次世界大戦時の1940年に、ドイツ軍が海から上陸するのを阻止するために作られた軍事防衛施設 大砲をこのレールで運搬していたそう。今はその上を歩くトレイルコースの一部となっている  途中、ナショナル・トラストが管理しているエリアに入ると、ダートムーア・ポニーが放牧されていました。とても小柄で、雨風に強いスタミナがあるこの小型の馬は、このあたりで長年作業馬として活躍してきましたが、時代の流れとともに数を減らし、今はデヴォンにある国立公園のひとつ、ダートムーアに、ほぼ野生の状態で放牧されながら保護されています。その親しみやすい姿に、思わず笑顔がこぼれます。さらに進むと、ブラウンストーン・バッテリー(Brownstone Battery)と言われる砲台跡が現れました。第二次世界大戦時に、ドイツ軍が海から上陸するのを阻止するために作られた防衛施設ですが、実戦で使用することはありませんでした。とはいえ、ガランとした砲台の建物や錆びついたレールを見ると、とても生々しい。目の前に広がる穏やかな海の雰囲気とは交わることがない、異様な光景です。しかし、これもこの地域の歴史であることには違いない。今は、ナショナル・トラストによって大切に保管されている国の遺産です。  やっとの思いでキングスウエアにたどり着きました。地元の人たちがサッカーの試合中継を楽しんでいるパブへ直行。地元エール・ビール抱えて外へ。道の向かいにある低い壁にパイントグラスを置き、靴を脱いで裸足になり、体を壁の上から投げ出し、川の向こう岸に見えるダートマスの街並みを眺め、ぐびぐびと飲むビールは、二人の体を達成感で満たしてくれます。 ダート川の河口付近。海の交通と防衛の要所として長い間占めてきた  バスに乗り宿へ戻る道中、若い男性ひとりが、我々に話しかけてきました。明らかに地元の人間でもなく英国人でもない女性ふたりが、ここで何をしているか不思議に思ったのでしょう。ブリックサムから海沿いを歩いてきたことを話すと、男性もよくこの辺りを歩くようで、話が盛り上がりました。「僕は、以前陸軍に所属していて、世界各国を駐在してきたあと、ここに戻ってきたとき、いかに自分が美しいところにいたのかを実感したんだ。でも、地元の人たちは、文句ばかりこぼし、どれだけ素晴らしい環境にいるのか気がついていない人たちがほとんど。君たちが歩いて来た道の存在すらも知らないひとも多い。実にもったいないと思うよ。」灯台下暗し。案外地元のひとたちにとっては、そんなものなのかもしれません。時間やお金をかけなくとも、意外と身近に心奪われるような景観はあるものです。ただ、歩くことを忘れかけている私たちは、そのことに気がついていないのかもしれない。そんなふうに思いました。  今回の旅は、目の前の風景を楽しむだけでなく、その奥深くにある時間の経過をも理解する、よい機会となりました。人の歴史だけでなく、なぜここにこのような地形ができたのか、なぜその動植物が生息するようになったのか、自分の視野を少し広げてくれたように感じます。パノラマ風景が目に入った一瞬に、太古から現代まで駆け巡り、時の流れを感じる。自分がまるでタイムトラベラーになったようで、ちょっと興奮します。そして、自分の足で回ることで、知らなかった英国の姿を発見した瞬間、ジワーと何か暖かいものが体に広がり感動している自分がいます。いつもは、へんてこな国だなと思う英国に対して、愛情と親しみが少し湧いてくるのです。これが癖になってやめられない!! *二日目のリポートは、こちら >> 10th September 2016, Sat @ South West Coast Path (Torquay - Kingswear), Devon 参照: *1 Regional Factsheets 2015, Visit England *2 England Domestic Overnight Trips Summary - Holidays - 2016, Visit England *3 The Value of Activities for Tourism, Visit England トレイル情報: サウス・ウエスト・コースト・パス オフィシャルサイト イングリッシュ・リベイラ・グローバル・ジオパーク オフィシャルサイト ユネスコ・世界ジオーパーク デヴォン州南部トーベイ オフィシャルサイト Walks Along the...