Report

ウォーキングや自然保護関連のイベント参加記録です。

 花鳥風月を気にし始めたら、それは老いてきた証拠とよく聞きます。私も気がついたら、周りにある自然をボーと眺めながら、季節の移り変わりに心動かされるような人間になっていました。大都会・東京で仕事と遊びに明け暮れ、お天道様を拝むことがほとんどない生活をしていた私。どうしたのでしょう。そのギャップに私自身が一番驚いているぐらいです。そんな少々老いてきた私が今気になっているのが、花鳥風月の「鳥」です。かわいらしさ、美しさはもちろんなのですが、今いる鳥は、恐竜の子孫、つまり恐竜そのものだという話を聞いて、私の中で注目度がさらにアップしました。その今も生き続けている「恐竜さん」がどんなものなのか、まずは見てみようとバードウォッチングのまねごとをして、双眼鏡をのぞいて見るのですが・・・、あれ、なんで?鳥が見つからない。 フル装備で、大きな単眼鏡と望遠カメラを抱え、湿地帯にくるバードウォッチャーたち  19世紀に英国から発祥したバードウォッチングは、今でもこの国のお家芸のひとつと言っても過言ではない、とてもポピュラーで身近な遊びのひとつです。私の住んでいるエセックス州は、湿地帯が多く、バードウォッチャーに大変人気なエリア。特に冬は渡り鳥たちが多く見られ、天気の良い日には、ハンティングウェアでカモフラーシュし、どデカい双眼鏡、または単眼鏡で、鳥たちを観察し、撮影している熱心なバードウォッチャーをよく見かけます。約300万人のバードウォッチャーが、この国には存在すると言われていて、それを象徴するのが、世界的にも有名な自然保護団体、王立鳥類保護協会(RSPB - Royal Society for the Protection of Birds)です。1889年に発足して以来、野鳥の保護とそれを取り巻く自然環境保全を促進してきた長い実績があり、会員メンバーが100万人以上の世界最大の野生動物保護団体です(RSPB HPより)。 真冬は、たくさんの渡り鳥が水辺に集まる。寒さより、野鳥観察  そのRSPBが1979年から毎年冬に行ってきた一大イベントが、Big Garden Birdwatch。約50万人のイベント参加者全員が、ある指定された週末一斉に、自宅で見れる野鳥をカウントし、その結果をRSPBに報告。その後団体によって集計され、英国に生息する野鳥の数とその変動を把握する貴重なデータとなります。今年は、1月27日(土)、28日(日)、29日(月)の三日間行われ、そのうちの日中1時間を自由に選びカウントします。庭がない人は、近くの公園、自然保護区、会社の敷地など好きなところを選ぶこともできます。家の窓から観察するのもよし、外でじっと観察するのもよし。集計結果は、指定された報告書に記入し郵送する、もしくはネット上で報告する2パターンのどちらかを選べます。 Big Garden Birdwatchへのカウントダウンを知らせる投稿。フェイスブックのページより © RSPB Essex  これはいい機会だと、私も早速自宅の庭に訪れる鳥たちを、双眼鏡片手にカウントにトライしてみました。ひとり庭の一角に構え、コーヒーを飲みながら、ハンターのように存在を殺し(ているつもり)、じっと鳥たちが来るのを待ちます。「ピヨピヨピョ〜」、「チュンチュンチュン」。2、3種類の鳥の鳴き声があちらこちらから聞こえてきますが、残念ながら鳴き声だけで、鳥の種類を確定できる知識は私にはありません。双眼鏡で「どこにいるの?」と木々の枝をくまなく見ていきますが、なかなか鳥そのものが見つからず、ひと苦労。「あ、いた!」と思っても、よく見たら木にぶら下がった萎れたリンゴだったり。これでは、カウントどころではありません。どうやら思い描いていた以上に、目が慣れ、コツを得るまでに時間と経験が必要なようです。よく考えたら私の主人は、子供の頃からハンティングをしていたからでしょうか、どこへ行こうと野生動物を見つけるのが得意で、毎回何気なしに指をさしながら、「ほら、あそこ」と教えてくれます。しかし、コンクリートジャングルのネオンばかり見てきた私は「どこ、どこ?」と聞いても、まだどこにいるのかわからないほど、ポイントずれずれです。バードウォッチングは、もともとハンティングから、野鳥を殺さず見て楽しむ遊びへと進化させたものです。つまり基本は獲物を見つけるのと同じということなんですね。 なかなか鳥の姿を見つけられず、カウントどころではない。それでも、ひたすら探し続ける  そんなバードウォッチング音痴の私ですが、めげずに探し続けました。カウントより、まずは鳥を見つけ出すこと。肉眼と双眼鏡両方であっちかな、こっちかなと見て回ります。ようやく開始して30分後くらい、木の上から美し歌声を響かせているヨーロッパコマドリを発見。誇らしげにジャズの即興ソロように歌い続けている姿を双眼鏡越しにキャッチ。この鳥は、12月中旬の寒さが厳しい時期から繁殖期の囀りを始めるそうです。きっと見たのはオスで、アピールに必死だったのか、かなり長い時間パフォーマンスを披露していました。次に登場したのは、鮮やかな黄色のボディ、その真ん中に顔からすっと黒いラインが入っている戦隊ヒーローみたいな模様をしたシジュウカラ。日本にいるシジュウカラとは、亜種が違い見た目が少し違います。警戒しているのか、せっかちなのか、忍者のようにぴょんぴょんと枝々を跳ねながら、「ティーキティーキ」とサイレン音のような鳴き声をだします。仲間にサインを送っているのかも。 ウェブでは、1時間のカウントダウン・タイマーとそれぞれの鳥のボックスに数値を記入できるようにしてある。とても便利 © RSPB  寒さが気にならないほど夢中になり、あっという間に1時間が経ちカウント終了。その後もハト、カラスなど合計5匹を目で確認できました。きっともっといたはずなのですが、残念ながら姿が見つからず。その後RSPBのウェブを通して、カウントした野鳥を報告し終了。とても気楽に参加できるイベントで、うまくカウントはできませんでしたが、それでもバードウォッチングを体験し、野鳥生態調査に参加できたことは、とても面白かったです。 私のカウント結果が、パイグラフで表示される。もっとカウントできたら・・・© RSPB 全体の途中結果と去年の集計結果もチェックできる © RSPB  野鳥観察を通して、自分の周りで一体何が行われているのかを知る。普段どこかで接点があるにもかかわらず、私たちが見過ごしている世界を意識することで、新たな視点を手に入れたように感じます。一番身近な自然と向き合い、意識を集中することは、少し瞑想に似たような、自分の存在や位置を再確認する行為なのではないかと思いました。何かとせわしない現代社会に生きる私たち。たまには立ち止まり、360度見渡してみる。野鳥たちがガイドとなり、未知なる世界へと連れて行ってくれる。バードウォッチングの魅了は、かなり深いようです。 参考資料: RSPB  ww2.rspb.org.uk 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

 先日、ヨークで行われたチャリティー団体・ザ・ランブラーズ(The Ramblers)のイベント、Ramblers Members Day (ランブラーズ・メンバーの会)に参加してきました。その時の様子を簡単にまとめてみたいと思います。 イベントブログラム Ramblers Members Day 開催地: ヨーク大学講堂内 日時: 2016年4月2日(土) 参加者人数:約150人ほど イベント内容: 9:00 受付開始 9:30 ザ・ランブラーズ会長グラハム氏と理事長サウスワース氏挨拶 10:00ー12:00 ワークショップ 2つのワークショップに参加 11:00ー13:30 昼食 12:00ー13:50 各ブースでの展示会 14:00ー15:45 公開インタビューノース・ヨーク・モアーズ国立公園運営委員会会長ウィルソン氏エキスパートに質問コーナーノース・ヨーク・モアーズ国立公園運営委員会会長ウィルソン氏英国赤十字ビーチ氏登山家ヒンケス氏Memory Map(デジダル地図)バドミントン氏Cotswold Outdoor(アウトドア洋品店)カーンズ氏ボランティア大賞授賞式 16:00 ウォーキング(1時間、1時間半のコース4つの中から選択) 参加してみて ランブラーズ理事長サウスワース氏  今回は、実際にフットパスを歩いている会員向けイベントで、ランブラーズの理念や活動を理解してもらい、さらに快適な歩きを楽しめるよう、ウォーキング技術のアドバイスやボランディア活動への勧誘などを目的としたものでした。全員参加の講堂での講演や報告会以外にも、理事会メンバー、会員、そしてアウトドア業界人が、直接情報・意見交換できる場として、ワークショップやブース展示会などが設けられていました。  まず、驚いたのは、予定通りにすべてうまく進行していったことです。普通このようなイベントは、時間が押してしまいがちです。ただ、そこは設立してから80年以上の歴史ある全国区のチャリティー団体だけあり、イベント運営やボランティアの使い方に慣れているようで、すべてスムーズでした。今回の会は、ランブラーズとしては初めての試みで、参加者も主催者側にも静かなる熱気を感じました。会員は中高年がメインなので、ヒートアップすることはありませんでしたが、それでもワークショップや質問コーナーでは、それぞれの意見やアイデアが積極的に述べられていました。ちなみに、参加者の多くは中流階級の白人中高年がほとんどで、白人以外では、私含め3人ほどでした。ヨークは、ほぼイギリスの中央にありますので、地元周辺の方々が参加者の過半数を占め、遠くてもそこから2、3時間内で来れる方々が来場していたようです。参加費は無料。受付後には、大会のプログラムと共に、協会のグッズや防水スプレーなどのサンプルが入ったバックをいただきました。会場にはコーヒー、紅茶、水と茶菓子が常備されて、昼食は会場の学食できちんとした料理、そしてケーキまで用意されていました。下世話な話ですが、協会の財政力は、それなりにあるよう見受けられました。 [embed]https://youtu.be/5sSTRRbzECo[/embed] © Ramblers GB 会場で上映されたランブラーズ最新プロモ映像  実際に大会がどのような感じであったかお伝えするために、参加したワークショップ2つ、訪れたブース、公開インタビューについて、具体的に説明していきたいと思います。午前中にあったワークショップは、1時間が2本立てで行われ、5テーマの中から2つを選択できました。その5テーマは以下の通りです。 通行権とランブラーズの関わり ランブラーズのキャンペーン活動、昔と今 読図入門 ランブラーズのグループウォーキングとは ウォーキングでの応急法 通行権と当団体の関わりについて、説明  私はランブラーズのことをよく知りたいと思い「通行権とランブラーズの関わり」と「ランブラーズのキャンペーン活動、昔と今」を受講しました。まず通行権の会では、プロジェクターを使って通行権の歴史と規定内容を紹介。またランブラーズがどのようにその過程で携わってきたのか、説明を受けました。ざっと内容を書きますと、 通行権を獲得するまでの歴史を簡単に解説 通行権獲得後のその他の法整備(国立公園制定、散策権、海洋・海岸アクセス法など) ランブラーズの関わり方 訴訟、全国区規模のキャンペーン展開 各地での活動内容(フットパスの不具合を報告・フットパス実地調査・予算確保・歩く環境により良い政策のためのキャンペーン活動・フットパス整備・フットパス設置と保全・【フットパスの存続を脅かす可能性のある】土地開発問題への関与・Definitive MapとOS Map上にフットパス表示を求める活動) 通行権とは何か? 法内容を説明 フットパスを含む通行権のある道の説明と標識 柵や踏み越し台の設置 農場でのフットパス保全(農作作業・家畜による障害にどう対応するか) 自転車、乗馬利用者との共有 不法侵入の定義とは 散策法とは何か 海洋・海岸アクセス法とは何か(2020年までにイングランドの海岸線をすべて歩くことができるようになる。ウェールズは、すべに2012年に開通済み【世界初】) Pathwatch活動について(フットパスがどのような状態にあるのか、オンライン上で文字や写真で近況報告し合う、会員参加型の調査・保全活動。イングランド全土45%まで登録済み) 1時間ですべてを網羅するのは大変そうでしたが、政策担当者が一生懸命説明していました。ランブラーズの存在意義が少し理解できたように思います。  次は、ワークショップ「ランブラーズのキャンペーン活動、昔と今」に参加しました。通行権は19世紀末ごろから主に労働者階級の人たちが、長年にわたり請求してきた過程があります。各地で発生した活動は徐々に規模を大きくしながら団結し、その中からランブラーズが誕生しました。その経緯もあり、同団体はフットパスなどの歩く環境に関係する政治・政策活動に積極的に関与しており、ほかの主なチャリティー団体同様、大規模なキャンペーン活動を盛んに行っています。このワークショップでは、今までを振り返り、そして今行われているキャンペーンをどのように進めるべきか、隣の人と話し合いをしてから、各グループの意見を発表し、全体で意見交換を行いました。話し合いの議題は2点。 ①今までの協会の活動の中で、一番社会に貢献したことは?  ②将来、協会はどのような問題に直面するだろうか?  私は、以前エセックスに住んでいて、退職後はヨーク郊外に住んでいる男性と話し合いました。ロンドン近郊のエセックスと北部の田舎であるヨーク地方では、多少環境の違いがあり、興味深かったです。例えばエセックスでは、ロンドン地価高騰でエセックスに移り住む人々が増えた関係で、新興住宅地が多く建設され、フットパスや自然保護区の保全への影響が懸念されています。一方ヨーク地方は、英国の主な工業地帯のひとつですが農場も多く、農作業後にフットパスが穀物で通れなかったり、きちんと整備されないことが多発しているそうです。地方自治体に通報しても、農協の政治力と財政危機で対応してもらえていないとのこと。ほかのグルーブからの意見を聞いていても、ここ7~8年の財政削減による影響は各地に現れてきているようで、大きな悩みのひとつのようです。ただ、自治体や土地所有者に文句や圧力をかけてもしかたがない。みな状況は同じで、誰かを責めても始まらない。ほかに解決策はないか模索する必要があるとの意見もありました。  例えば、歩くツーリズムと地元観光業の発展、市民の健康問題の解決策として、ウォーキングとフットパスの重要性を感情的にではなく、しっかりとデータで示し、どれだけメリットがあるかを訴えべきだと主張していました。また、英国乗馬協会などのチャリティーで、ランブラーズ協会よりももっと積極的に道のデータ収集や整備をしている団体から学ぶべきだという声も。道の整備は、できるならボランティアの力を借り、自治体に頼らなくてもできるようにしていくべきだ。また、州や市レベルではなく、教会区(一番小さい地方行政区。日本でいう町内会規模)に話をした方がいいのではという意見も出てきました。ただ、その一方で近年の英国では、安全衛生法が厳しくなり、保険の問題や使う作業用具の調達などの負担、土地所有者との揉め事を回避したいこともあり、ボランティアが道整備をするのを、地域によっては自治体が渋る傾向があるのも事実だそうです。お互いの気持ちと利益がうまく重なり、ウィン・ウィンの関係ができないだろうかと思いました。あともうひとつ興味深かったのは、協会の会員があまりにも白人の高齢者ばかりで、今後協会が存続していけるのだろうかと、問題提起された方がいらっしゃいました。マイノリティや若者などにも、もっとアピールする必要があるようです。余談ですが、実際に来場していた会員の中で、スタッフ以外では、40代の私が一番若いのでは(しかも、東洋人)と思うほどでした。 「ランブラーズ協会のキャンペーン活動、昔と今」ワークショップの様子  昼食時と同時に開催されたブースでの展示会は、ランブラース協会各部門、季刊誌編集部、そして各地域担当者や、アウトドア・ギア専門販売店、赤十字、ツアー会社、GPSやデジタル地図のサービス提供会社など、全部で13ブースの小規模なものでした。私は、主に協会がNHS(英国国民健康保険)の指導のもと行っているWalking for Healthの担当者と協会の季刊誌”Walk”編集部の人たちと話をしました。  Walking for Healthの活動は、健康に問題がある人、運動不足な人、リハビリが必要な人、身体的に制限がある人、一人暮らしの老人、新生児を持つ母親など、何かしらのサポートが必要な方々に、歩くことで健康になってもらおうと、定期的に開催されるグループ・ウォーキングのことです。地方自治体と各地域の健康保険機関の指導のもと、癌患者支援団体マクミラン(英国最大規模のチャリティー団体のひとつ)からの資金で、ランブラーズがウォーキング実施をサポートしています。  ここ最近、歩くことが心身ともに健康になる一番の方法であるというデータも多々発表され、医療費削減、社会保障問題の解決にも繋がっていくのではないかと、大変注目されている活動です。例えば、健康歩き事業に1ポンド投資すると、国民保険は7.18ポンド削減できるというデータを、Natural England(イングラントとウェールズ内の自然・景観保全活動を仕切っている政府外公共機関)が発表しています。とはいえ、フットパスが全国にある英国においても、何かきっかけがないとなかなか地元の人は歩かないようで、いかにそのような方々を外へ連れ出し、仲間と一緒に歩いてもらうか。健康状態は人それぞれゆえ、いかに上手くその人に合ったウォーキング・ブログラムを提供できるか。そして、歩き始めた人たちに、今後いかに継続してもらうか。グレードアップした人たちが、次に行ける場をどのように提供していくのか。まだ課題は多くあるようですが、少なくとも参加した人たちからは、良い反応が出てきているようです。  特に精神的な面での影響が大きいようで、歩く行為そのものだけでなく、人と会い話ができることが心のケアに大きく貢献しているようですし、単純に楽しめるということが、継続に繋がっているようです。老人、母親、不登校児、身体障害者など孤独になりがちな人たちは、同じ境遇の方々に会うことや逆にまったく違う環境・世代の方々と会うことで良い刺激を受けている。そのあたり十分配慮しつつも、自主性や自尊心を大切にし、強制的にならぬよう、うまいさじ加減が必要のようです。今後は、医療現場でも”prescriptions from illness to wellbeing” ー 従来の治療のための医薬品処方箋から健康で幸福になるための運動の処方箋(緑の処方箋)を、直接患者に渡してもらう。医療とウォーキング活動の連携の向上により、さらに参加しやすいシステムを構築し、参加者(患者)に理解を深めてもらおうと、今年一部の地域で実験的に実施されているようです。  また国は、都市のさらなる緑地化推進や国立公園を地元地域住民の健康改善に役立てる構想を打ち出しており、緑の処方箋を、ただ歩くことからバードウォッチングなどのアクティビティやこれらの地域の整備ボランディアとして参加を推進するなど、もっと幅を広げていこうという動きが、ランブラーズ協会や自然保護団体のサポートのもと、活発化してきているようです。それによって地域の医療負担が減り、財政難でカットされた環境保全活動費への新たな解決策となるのではと期待されています。 [embed]https://youtu.be/_H73kKHc4V8[/embed] キャンペーン映像  次は、協会の季刊誌”Walk”編集部担当者と話をしてきました。この季刊誌は、作りは一般誌レベルのクオリティーで、会員には毎回無料で送られてくる(もしくは、デジダル版にアクセスできる)ものですが、普通に本屋でも購入することができます。ここでもこの協会の「力」がうかがえるように思います。ブースでは、クイズとアンケートが行われており、アンケートには「今後どこへ行きたいか」「今後取り上げて欲しいギアはあるか」といった項目があり、私はそれぞれ「日本」と「ミズノのブレスサーモ」と書いてきました。大きなボードにも同じ質問「今後どこへ行きたいか」が表示され、自由に書き込めるようになっていました。みなの答えは、やはり英国国内とヨーロッパが多く、その他の地域では、ネパール、ニュージーランド、中国、アメリカ、カナダと書かれていました。私も負けじと、日本と書いておきました。いつか海外の方々に、日本へ歩きに行きたいと思わせるようにできるといいなと思います。  編集部の方に直接話を聞いた際にも、日本のトレイルをアピールしてきました。”Walk”では毎号、海外トレイルやハイキング特集”Global walk”というコーナーが掲載されています。どうやら海外のハイキング専門旅行会社の協力で、毎回特集が組まれているようです。欧米、南米、アフリカといった比較的英国から地理的に近い地域を今までは取り上げてきましたが、新たなエリアを開拓したい様子でした。熊野古道などの歴史ある巡礼の道や英国でも大変ショッキングなニュースであった東日本大震災地域で整備しているみちのく潮風トレイルの話から入り、日本ロングトレイル協会加入トレイルについても、できるだけアピールしてまいりました。ついでに韓国の済州島オルレまで話をしました。 ウィルソン氏が、事前に受付けた質問に答える形で、対談が進んでいった  午後に開催された公開インタビューには、ゲストのノース・ヨーク・モアーズ国立公園運営委員会会長ウィルソン氏が登場しました。ウィルソン氏は、第3セクターでキャリアをスタートさせ、国立公園運営以外にも、Natural Englandの評議員、多くの自然保護や持続可能な開発に携わってきた経歴をお持ちの方でした。実家が農家ということもあり、ヨーク地方の農業団体とも強い信頼関係があるようです。ノース・ヨーク・モアーズ国立公園(North York Moors National Park)は、正直申し上げてピーク・ティストリクトや湖水地方などのように、誰でも知っているメジャーな国立公園ではありません。ヨーク地方には、もうひとつヨークシャー・デイルズ国立公園があります。英国独特の美しい田園風景が見られるヨーク地方を代表する地域で、ナショナル・トレイル第1号のペナンウェイで通過できることもあり、こちらの方が有名で、ノース・ヨーク・モアーズは陰に隠れぎみです。認知度を上げ、地元経済を活性化させるためにも、広報活動に力を入れいます。努力が実り、来園者は増え、1997年Customer Service Excellence®(特殊法人顧客サービス適格認定機関)にも認定され、今も保持しているそうです。  ただ、この公園では去年夏に大きな決断を迫られました。公園指定地域内にある炭酸カリウムの採掘計画案が自治体に提出され、地元住民や保護団体なども含め長い話し合いが行われてきました。運営委員会は去年夏に評議員会内で投票を行い、僅差で計画案受け入れが最終可決され大きな話題となりました。実は、ほかの国立公園でも今議論が盛んになっているのが、公園内におけるシェールガス採掘問題です。政府はシェールガス開発を推進したい考えで、地元住民と今後具体的に話し合いが行われる様子です。ウィルソン氏は、国立公園に住む人間の心情としては、観光客が増えたり、採掘事業の受け入れに喜べない部分もあるが、地元経済を守るためには、時として承諾しなくてはならない現実がそこにあるとおっしゃっていました。勝手な憶測ですが、ウィルソン氏はもともと農家出身ということもあり、自然と人の営みの関係を非常に現実的に見ていらっしゃるように思いました。英国でも自然、エコといったワードの持つ美しいイメージが大きくなりすぎて、そこへ金儲けや資源といった話になるとアレルギー反応を起こす方も多いようですが、やはり地元の人たちにとって何が一番いことなのか、それが重要なことに感じました。炭酸カリウムの採掘事業は、なるべく環境や観光業にダメージを与えないよう配慮された計画案だそうで、今後住民がどのように対処していくのか、見守りたいと思います。 ランブラーズのイベント、ウォーキングなしでは、終われない  長々と書きましたが、以上イベントの報告となります。少しでも会場の雰囲気が伝わればなと思います。イベントの最後は、ランブラーズ協会が歩かないでどうするということで、ウォーキングで締めとなりました。私は時間の関係で大学構内を回る短いコースに参加したため、さほど歩いてはいませんが、会員の方々と話をする良い機会となりました。  今回参加して学んだことは、日本の地方や自然保護活動が抱えている問題は、英国でも同じように壁にぶつかっていることを確認できたことが一点。ただ、そこはさすが議会制民主主義発祥の地だけあり、とにかく時間がかかっても話し合いを重ねていく、多くの人々にアピールしていくしかないといった気持ちが感じられました。そして新たに注目されているボランディアの力や緑の処方箋。地元住民の協力で道を整備していくだけでなく、彼らに頻繁に歩いてもらうことが、道を保持していける秘訣のように思います。今後どのように発展していくのか、常に観察していきたいと思います。  最後に、今回ランブラーズの活躍と影響力を改めて感じ、考えてみました。英国における歩く文化を大きく発展させ、フットパスという壮大なシステムを作り上げてこれたのは、彼らの貢献が大きいのは間違いありません。ただ、もともとレクリエーションウォーキングを重要視する知識人と労働者階級から出てきた団体ゆえでしょうか、未だに土地所有者や保守的な人たちにに対しての嫌悪感があり、どうしてもリベラルな政治活動をする傾向があるようです。今回の会でも、言葉の端々にその雰囲気が感じ取れました。私個人でウォーキング好きな人々に取材していても、ランブラーズは政治色が強くて苦手という方たちは、意外に多かったです。私としては、当団体とは違う立場にいる方々にも、ぜひ話をもっと聞いてみたいと思いました。大会は盛りだくさんで、最後は頭がパンク状態でしたが、それでも参加して良かったと思います。やはり生の声を聞くことは貴重で、自分の見方がさらに広がって良い刺激となり、いろいろ考え直させられる機会となりました。特に団体運営サイドだけでなく、会員の方々にいろいろと話を聞けたのが大変貴重でした。次回も開催されるようなら、また参加してみたいと思います。 2nd February 2016, Saturday @ University of York 【安藤百福記念 自然体験活動指導者養成センター紀要「人と自然」第6号2015年度に掲載されたレポート「イギリス・ウォーキング環境保全の現状 ー 英国フットパスの新たな試み」(38から44ページ目)は、この記事を一部に加えて書かせていただきました。】 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...

© Blackwater Forget Me Not Walk 2014  9月20日(土)に、私が住んでいるエセックス州、モルドンで開催されたチャリティー・ウォークに、私の在英10周年記念として参加しました。たまたま買い物に行ったスーパーの掲示板で見かけたポスターが目に止まり、地元のイベントというこで、ちょっとトライしてみようかなと思い、エントリーしたのがきっかけです。英国白血病・リンパ腫研究所(LEUKAEMIA & LYMPHOMA RESEARCH)が行なっている”Forget Me Not Walk”と呼ばれるイベントで、30キロのウォーキングにチャレンジし、何事もなく参加者の方々と共に楽しみながら、完歩しました。当日朝から雷雨で、一時はどうなることかと心配しましたが、いざ歩き始めると、雨は上がり、想像以上に快適なスタートとなりました。コースは、地元モルドンの北側を30キロをぐるっと一周するもので、スタート地点がゴールとなります。マラソン・チャレンジと題していたので、てっきりタイムや順位が記録されるのかと思いきや、「では、ぼちぼち歩き始めましょうかね」といったノリでみながゾロゾロと歩き出し、ちょっと驚きました。どうやら、決められた距離を歩ききることが「挑戦」ということだったようです。  今イベントは、白血病で若い息子さんを失ったリーブ夫妻が英国白血病・リンパ腫研究所と協力して、息子さんの思いを忘れないために企画したものです。イベント参加条件は、エントリー代を支払いこと(今回は、£10)とチャレンジ参加者全員、自分についてくれるスポンサーを自分で募り、そのスポンサー代を団体に寄付することでした。イベントによっては、最低限の募金額が設定される場合がありますが、今回は特になく、できる範囲でがんばるというスタンスでした。英国は、チャリティー大国です。福祉国家の英国と言われていますが、国からの支援には限りがあり、チャリティー団体が大きな役割を担っているため、人々にとって身近な存在です。ボランティア活動、チャリティー・イベントは、頻繁に行われています。募金活動も思考をこらして、今回のウォーキング・チャレンジのように、参加者が楽しみながら寄付を募る企画が多くあります。 [osmap gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/10/Charity-Walk-in-Maldon-new.gpx" markers="TL8553011250!red;出発終着点:グレート・トットナム"] [osmap_marker color=red] 出発終着点: イングランド東部 グレート・トットナム  その中で、私が今イベントに参加したいと思った理由は、地元の人が行うイベントだったからです。募金先もあまり大きな団体でなく、白血病・リンパ腫のための治療改善と患者サポートと目的もはっきりしてい ました。大規模なイベントになるとチャリティー・イベント専門企画会社が入り、どうしても商業化された感が強く、私としてはスポンサーを募ることに抵抗があります。今回は、モルドンに住むご夫妻と彼らのご近所さんや友人・知人がボランティアとなって開催されたこぢんまりとしたもので、終始のんびりとアットホームな雰囲気が漂っていました。私のように、祖国を離れてた根無し草の人間としては、住んでいる地域の方々との交流は大きな意味があり、私自身いつもこだわっている点です。 イベント主催者リーブ氏の挨拶からスタート  歩き始め最初の一時間は、いくつもの田園を通り抜けて行きました。このあたりでは、麦、ライ麦、菜の花、亜麻仁、ムラサキウマゴヤシなどが栽培されています。収穫はすでに終り、少し寂しい風景ではありましたが、道中出会った馬、羊、牛、あひる、孔雀たちに、癒されました。気温が上昇し、蒸し暑くなり始め、参加者みんなが着ていたジャケットを脱ぎ始めると、今チャリテ ィー団体のTシャツがお目見え。のどかな田舎道が突如パッと眩しいぐらいの赤色に染まりました。不思議な光景でしたが、宣伝効果は抜群と言えそうです。英国には、フットパスといわれる歩道が、全国に網の目のように数多く存在しています。このフットパス、正式名を Public Footpathといい、人々がまだ歩くことでしか移動できなかった時代に使用していた歩道を、今日レクリエーション目的のために保存しているれっきとした公道です。またPublic Right of Way (PRoW)という名で、誰でもこの公道を歩く権利が法律で認められています。つまり、ひとたびフットパスと認められれば、住宅地であろうが、農地であろうが、ゴルフ場であろうが、歩くことができる。日本ではちょっと考えにくいユニークなシステムであります。ちなみに今回のコースの七割は、フットパスを歩きました。 赤の騎士団、 モルドンの田舎道をゆく 満潮の川を見ながら、土手道を歩いていく  チェックポイントで一息してから、いよいよ前半のハイライトである川沿いを歩くフットパスにでてきました。タイミングよく満潮で、朝の嵐が信じられないような穏やかさが、モルドン独特の朴訥とした風景をさらに美しく演出していました。エセックス州は、平地の州と言われていて、高低差がほとんどありません。 モルドンあたりは特に湿地帯のため、海抜がマイナスの土地も多々あります。ブラックウォーターと呼ばれている河口付近は塩水で、その昔人々はseawallと呼ばれる盛土を手作業で設置し、満潮で浸水しないよう塞き止め、川沿いの土地を農地として使えるよう年月をかけて塩抜きしていきました。その努力の結晶である土手道を歩く、一歩一歩踏みしめるように力が入りました。 昔ながらの帆船が、静かに海へと向う  河口と運河の合流地点に、第二チェックポイントがあり、そこで昼食。サンドウィッチ、スナック、ケーキ、果物、エネルギードリンクなどすべてボランティアの方々が用意され、手際よく給仕してくださいました。きっとみなさんスポーツ ・チャリティー・イベントに慣れていらっしゃる方々なんだと思います。軽く食事をしてから、今度は、運河沿いを歩き始めました。英国には産業革命時代に多くの運河が建設されました。今は、船遊び、釣り、そして運河脇を歩くといったレジャー目的で使われ、国の遺産として大切に保管されています。また、川や運河に停泊しているボートを正式な住居として生活されている方々もいらっしゃいます。私の知人数人もボート暮らしですが、外はどこから見てもボート、でも一旦中に入ると普通の家とまったく変わらず。中には、室内ミニサッカー場を子供のために作ったひともいます。 この日は、釣り人たちが、まるで修行僧が座禅を組んでいるかのように、静かに運河の水面を見つめながら座っていました。 しっかり食べて、後半戦へ  今回のチャレンジや地元のグループ・ウォーキングに参加して面白いなと感じたのが、みなさんの歩くスタイルです。 みなさん歩きながらよく喋ります。老若男女隔たりなく、話している内容もアウトドアや自然と何の関係もないものも多 くて、びっくりしました。地元だからかもしれませんが、景色もそんなに見ていない。中には歌いながら歩いている方や愛犬を連れている方もいらっしゃいました。もちろん歩くことだけに専念しているひとも、静かに歩くことを楽しんでいるひともいらっしゃいましたが、どうやら歩く(散歩) = 社交の場という風習が、英国にはあるように感じられます。何かに懸命に挑戦している雰囲気はなく、このリラックスした感じが実はこのイベントの醍醐味で、今回で4回目の開催を迎えることができたポイントなのかもしれません。 全長約22キロある運河脇を歩きながら、内陸部へと進む  運河を離れた後、今度は鉄道廃線跡を3.5キロほど歩きました。モルドンと近くにある都市とを繋ぎ、地元のために118 年間走り続けてきた鉄道は、車社会化した1966 年に廃線となりました。今は、線路があったであろう築堤はトレイルとして保存され、両脇に生えている木々が長い緑のアーケードを作り出していました。車窓から見えるモルドンの風景はどうだったんだろうか、想像してしまいます。 真っ直ぐに伸びる廃線跡を歩く  最後のチェックポイントを通過し、リンゴ園が広がる丘を登り始めました。ひと昔前までこのあたりは、リンゴ園がそこかしこにあったそうです。1973年に英国が ECC(欧州経済共同体)に加盟後、国外からリンゴが輸入され始め、価格競争に負けた地元の生産者たちは、多くのリンゴの木を処分せざるおえなくなりました。残されたリンゴの木々には、何とも言えない喪失感が漂っています。日本人としてひと事ではなく、生き証人を見た思いです。歩くことでしか発見できない小さな村の物語や歴史がそこにあり、それが世界の大きな動きに繋がる。昔世界史の教科書に記述されていたことが、現実として目の前で見ることができた瞬間でした。  丘を登りきり、静かな家並みを通りぬけ、出発点であったパブに戻ってきてゴ ール。5時間半で、チャレンジを終了しました。完歩記念にメダルをいただきました。スポーツの大会は、中学校のマラソン大会以来でしたので、多少緊張していましたが、終わってみると心地よい疲労と達成感を味わいました。パブがゴールというのも実によく考えられていて、用意された軽食と祝福の一杯をみなさんそれぞれ楽しんでおられました。ひと仕事終えた後の一杯は、やっぱり旨い!! りんご園を通過  今回のチャレンジで、30kmに挑戦した人たちは40名、ショートコースの20kmは31名、合計参加者数71名でした。ある方は、病で失った家族や友人のために、ある方は、病からの復帰を祝うために。それぞれの目的、思いで歩かれていました。最近白血病を克服し、今チャレンジで最後まで歩ききるという強い意志で参加していた女性は、大奮闘した結果、最終グループの仲間と共にゴール。みなから祝福の喝采を受けていたのが印象的でした。家族、友人のみなさまのご協力のもと、私が集めたスポンサー代、最終金額は、£408.41(約7万1413円)となり、無事に全額英国白血病・リンパ腫研究所へ寄付されました。心から謝意を表するとともに、リーブ夫妻からも、みなさんのご厚意に対しての感謝、そして寄付金が有効に活用されるようしっかり見守っていくとのメッセージをいただきました。 多くのスポンサーに、感謝します。みなさんの応援が、力となりました 地元紙にイベントの記事が掲載された © Maldon and Burnham Standard, September 25, 2014  今回の経験で私が学んだことは沢山ありますが、一番の大きな発見は、人間たまには人様のために何かをする。その体験は、己をよく知ることにもなる、ということです。私のように世の中にために役立つ頭脳や才能も無く、子供を産んで育てて次世代社会へ貢献しているわけでもない人間としては、自分の時間を他人のために使うことは、大変有効に思いました。たとえ小さなことでも、偽善的で自己満足な行為でも、混沌とした世の中で人間が持っている可能性や希望を感じることができるよい機会だと思います。さらに、今回は歩くという行動を改めて認識しました。人類の一番の進化は、二足歩行をしたということではないでしょうか。しかし、利便性優先の現代社会で二足歩行をしなくなってきている私たちは、何か大きなものを失いつつあるのかもしれません。歩くことでしか見えてこない世界があるように感じます。 人生初のメダル獲得、嬉しい  多くの方々に支えられた英国生活10年。おかげさまで、チャレンジによってよい節目をつけることができました。モルドンの魅力も再確認することができ、ここに住むチャンスに恵まれてよかったと改めて感じています。最後に、主催者のリーブさんに、「なぜ、このウォーキング・イベントを企画したんですか」とゴール後質問してみました。すると彼はこう答えました。「人は、楽しいことにはお金を出してくれるんです。」う〜ん、なるほど。楽しみながら、目的を達成させる。英国のチャリティー社会、まだまだ学ぶことが多くありそうです。みなさまも、たまには歩いて遠出してみてはいかがでしょうか。きっと面白い発見があると思います。 20th September 2014, Sat @ Maldon, Essex 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2021...