Trial

トレイルと自然保全関連で、歩く以外での挑戦について、お伝えしています。

 日本にいたころ、春から秋にかけて、山菜採りやキノコ狩りでの遭難事故のニュースをよく聞いた。山に入る理由は、登山がダントツの1位だが、山菜採りやキノコ狩りが2位にくる地域もあるようで、人気だ。ついつい夢中になってしまい、滑落、道迷いするケースが多いとか。気持ちはよく分かるが、くれぐれも安全第一で楽しんでほしい。 春になると、近所の丘一面をラムソンが埋め尽くす。ニラの代用品として、餃子の具に入れると美味  不思議なことに、英国ではこの手のニュースを聞いたことがない。もちろん、日本と英国では風土も地形も違うので、単純に比較するのは無理があるとは思う。ただ、これだけフォレジングが盛んなのに遭難があまりないのには、何か理由があるのだろうか。素人なりにちょっと考えてみる。 秋になると、フォレジング教室があちこちで開催され、大変人気である  まずは、歩ける道が見つけやすく、安全に利用できる環境が整っていること。英国には「フットパス」というレクリエーションのために整備された歩道が、網の目のようにあちこちに存在している。各フットパスには、黄色の矢印マークの標識があるため、私のようなおっちょこちょいでも道に迷いにくく、ほとんどの道は地元住民によってきちんと管理されているので、歩きやすい。私が普段、犬の散歩やフォレジングに利用しているのも、このフットパスだ。  さらに、フットパスと並行してあるのが「アクセスランド」の存在。アクセスランドでは、主に環境保護団体や林業委員会が所有している土地、そして村が管理しているCommon land(日本の入会地と似たシステム)を、自由に歩き回ることができる。フォレジングも、生態に負担をかけない程度に推奨されているのが嬉しい。シーズンになると、フォレジング情報やワークショップなども開催されていて、人気のようだ。  そして、上記の2つをすべて表記している「OSマップ」という強い味方がいる。Ordnance Survey(英国陸地測量部)が発行している地図で、Exploreシリーズと呼ばれている2万5000分の1地形図は、ウォーキングやサイクリングをする人間にとってはマストアイテム。これがあれば、ほとんど迷わない(ただし、基本どこを歩いても良いスコットランドに関しては、また別の話)。素人でも簡単に理解できるデザインで、読図に自信がない私のようなド素人でも安心して使えるので、とても便利だ。また、どこの本屋、観光案内所でも買えるのもありがたい。最近では、デジタル版も充実していて、スマフォのGPSで現在地を表示できたり、歩いたコースを記録できたりする。天下のGoogleマップさんでは、太刀打ちできない領分だ。私の場合は、紙版とデジタル版の両方を必ず持って歩きに行く。また、紙版は本棚にズラッと並べらた私のコレクションになっていて、新たな地図が加わるたびに、ニヤッとしてしまう。 OSマップ・Exploreシリーズ。スマフォ・アプリ版もあり。ナビゲーションには、両方を携帯するのが、ベスト  ということで、私が出した仮説は、上記のような歩く環境が整っているため、遭難が少ないのではないかということ。ただ、フォレジングには、もうひとつの身の危険がある。キノコの誤食事故。こちらは、英国でも時々ニュースになる。リスクが高いため、私はまだ手を出せないでいる。まずは、キノコ狩りが得意なお友達でも作ることから、始めようかと思う。 【この記事は、自然体験.comに連載された記事『英国カントリーサイドにて』を再編したものです。】 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2023...

 ウチには犬がいる。だから、散歩は毎日欠かせない。出かける際には、犬のフン用のビニール袋を片方に、そして、フォレジング用のビニール袋をもう片方に入れていく。私にとってのフォレジングは、散歩コースの延長線上にあるのだ。近くの森、草原、農場、公園、垣根、車道の脇など、常日ごろから観察し続け、春から秋にかけて、旬のものを一番状態の良いときに採取する。同じ場所で見つけることができる果実や野草もあれば、キノコなどはどこに出現するか分からない。毎年気候が違うため、狙って行ってもハズレることも多々あるが、ハズレても、それはそれでワクワクするものである。かなりギャンブル性があるのだ。 フォレジングのバイブル本 ”Food For Free”  フォレジング争奪戦は、何も人間だけがライバルではない。森に住む野生動物たちも、刻々と良きタイミングを見計らっている。シカやアナグマ、キツネ、リス、ウサギ、野鳥など、彼らの目利きに人間が勝てる見込みは、かなり低い。この前も、牧草地の垣根にヘーゼルナッツを見つけた。「おお、たくさんなってる。時間のある明日、摘みに来ようっと」と思って翌日行ってみると、見事に実が全部に消えていた。リスの仕業だ。やられた!  またあるときは、「今年は、果実が少ないな」とボヤいていたころ、朝起きて庭に出ると、そこにはでき立てホヤホヤの糞があった。明らかに愛犬のものとは違うそのブツには、果実のタネがぎっしりと詰まっている。プラムなどを食べたキツネが夜こっそり忍び込み、わざわざご丁寧にも挨拶代りにとマーキングしていったものだ。それを見つけた愛犬は、毛を逆立て、私も地団駄を踏む。「野郎ども、挑発してきおったわ。」 そのまま鼻息荒く、愛犬と森へズンズン入って行けば、シカやウサギの置き土産のダニに食われて帰って来るのが関の山なのだ。ライバル恐るべし。 西洋ツツジの真下に、ヘーゼルの木が生え始めた。リスがナッツを埋めたのだ  ただ、ふと考えてみると、私のフォレジングは遊び感覚のゲームのようなもの。タダに弱い主婦が躍起になるぐらいの程度だが、野生動物にとっては、これは生死を懸けたゲームなのだ。そして、その食を提供している木々は、彼らによって種子散布ができ、広範囲に自分たちの子孫を残せる。つまり、上記の植物たちは自分で移動できない代りに、野生動物たちが種の運び屋となるよう、お互いに協力できる体制を進化させてきた。それをZoochory(動物散布)と言う。動物散布にはいくつか方法があり、先ほどのリスなどは、土にナッツなどを埋めるScatter Hoarding(貯食型)、キツネや鳥などは、食して糞として散布するFrugivory(周食型)とされている。そのほかには、毛や鳥のくちばしなど体に付着させるAttachment(付着型)などがある。 リスによって食べられたナッツの殻が、そこらじゅうに落ちている  はてさて、その共同体の輪の中に、私のような人間は入っているのだろうか? 一応、Anthropochory(人為散布)というのがあり、これは動物散布付着型が、人間によって行われることである。しかし、私の自宅付近の生態に関して、私が運び屋としての役割がそれほど大きいとは思えない。服に着いた種子をつまんで捨てる程度のお役目。むしろ、野生動物たちの餌を横取りする、邪魔者なのかもしれない。そりゃ、キツネも糞を落としていきますわな。  英国では、フォレジングはひとつの食文化であり、社会に認められている。私有地であっても、持ち主の許可があり、個人消費目的であれば採取可能である。ただし、みなこうアドバイスする。「分をわきまえて、ほどほどに」と。 つづく *第三部は、こちら >>。 【この記事は、自然体験.comに連載された記事『英国カントリーサイドにて』を再編したものです。】 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2023...

 先日、新聞を読んでいたら、ある記事が目に留まった。デンマーク・コペンハーゲンにあるレストランNoma(ノーマ)が、今年10月にガストロノミー界のアカデミー賞と謳われている「世界ベストレストラン50」で、1位に輝いたという内容。グルメではない私は、本来ならスルーする記事ではあるが、袖見出しに、“Chef René Redzepi, famed for foraging techniques, claims first place for Copenhagen eatery.* ”(フォレジング技術で有名なシェフ、レネ・レゼピ氏が、コペンハーゲンのレストランで1位を獲得”)と書かれていた。「Foraging techniquesって、シェフ自らが森に入って食材を探すってこと?」 Giant Puffball(オニフスベ)が、草原に突如現れる。  「Foraging(フォレジング)」とは、自然界に自生する食材を採取する行為を意味し、日本で言う「野草摘み」や「キノコ狩り」などがそれに当たる。ただ、本来の意味は「食べ物などを探し回る、あさる」で、卑しい、さもしいニュアンスが込められている。英国人にそのことを問うと、「元来、ぶらぶら歩いて食料を調達することは、下衆のすること。身分のある人たちは、馬に乗るから」と教えてくれた。日本の紅葉狩りに「狩り」が付けられたのと、相通じるところがある。 日本のより少し小ぶりな英国の栗  では、なぜいま世界一の高級レストランが、フォレジングなのか。旬のもの、地のものを提供するレストランはどこにでもあるが、このレストランが面白いのは、シェフとスタッフ全員で森や海に行き、北欧の自然から得られる食材しか使わないという、徹底したこだわりがあるから。例えば、レモンは北欧にはないので、アリが放つ酸を柑橘類の代用品とするらしい。  その時、その場で採れた食材のみ使い、芸術的な品々に仕上げたものを提供し続け、美食とは無縁だった北欧の食文化に革命を巻き起こした。そこにある自然、時、土地を通して食のあり方、向き合い方を変え、世界ナンバーワンのレストランとなったそうだ。今世界で最も予約が取れないレストランのひとつで、デンマーク経済をも救ったとか。古いんだか新しいんだか、なんだかよく分からないが、自然回帰ブームがグルメ界でも起きているとは、実に面白い。  欧州人は、フォレジングが大好きだ。歴史も長く、それが許される環境も整っている。特に秋はキノコ、ナッツ、ベリーなどを探しに、みな躍起になる。ウチの近くでも、タッパーやビニール袋を持って、せっせと薮いちごやカラカサタケを採っている人をよく見かける。みな目をキラキラと輝かせ、童心に戻ったように、夢中になっている。タダで食材を得られるのはもちろんだが、ふらふらと歩き回りながら季節を感じ、そこでようやく見つけた自然の恵みを手にしたときの高揚感は、格別。だから、いつもより丁寧に調理し、食したときは、増し増しで美味い! 自分と自然と時が一本で繋がるようで、体の奥底に眠っている人間の本能が、刺激されるのかもしれない。これは癖になる。 一番人気のセイヨウヤブイチゴ。ジャムやサマーベリー・プディングなどに使われる  コロナ禍によるロックダウンやEU離脱で、一時的に食糧やガソリン不足が起こり、旅行や外食の機会が減った英国では、身近にある自然の中で遊び、自分の身の周りにある環境を見直す人々が急激に増えた。テレワークや仕事の時短で時間ができた人たちは、自宅で野菜を育て、自然酵母でパンや保存食を作り始めた。そんなアウトドアズの醍醐味を知ってしまった新参者もフォレジングに注目しているようで、今年は争奪戦になりそうだ。私もビニール袋を提げて、いざ参戦!。 つづく *第二部は、こちら >>。 【この記事は、自然体験.comに連載された記事『英国カントリーサイドにて』を再編したものです。】 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2023...

大都会からド田舎へと流れてきたワタシ  15年前までの私は、東京・新宿にある高層ビル内のオフィスで、映像編集の仕事をしていました。甲州街道とそれに吸い寄せられるようにコンクリートジャングルが遥か遠くまで続く風景を、オフィスの密閉されたガラス窓から、時々ボーと眺めていました。そして、その先には、富士山。徹夜で作業した朝には、赤く染まる姿を拝むこともありました。無機質の冷たい部屋から見る富士山は、遥か彼方にある桃源郷に感じていたのです。その私が、その後渡英し、ひょんなことから2018年夏に、ド田舎のサマセットへと、たどり着きました。今は、あの大都会東京で、リアルに感じられなかった富士山を見ていた自分とは、真逆の立場になったわけです。人生、不思議なもんですね。  そのサマセットって、どんなところかと簡単に申し上げますと、ブリテン島の南西部に位置し、比較的穏やかな気候で、古き良き英国が残る牧歌的でのんびりしたところです。チェダーチーズやサイダー(りんご酒)が有名で、英国最大の音楽フェスが開催されるグラストンベリー、ジェーン・オースティン小説の舞台になっている英国の保養地バースもサマセットにあります。そんな風土の中、「自分たちのことは自分たちで」という独自路線をゆく精神が育まれ、国の中心であるロンドンを意識せず、チェーン店の侵食を嫌い、地産地消の考えが浸透している、ちょっとアナーキーで、ヒッピー色が濃いのが特徴です。 [osmap centre="ST3707833796" zoom="1.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Somerset-area-new.gpx"]青色で示されたエリアが、サマセット州 大鎌草刈りって?講習へ参加してみた 元ヘビメタ少女には、大鎌のイメージは、死神。よい子は、真似しないで!© Gillian Best  新たな地に移り住めば、その土地の洗礼を受けるものです。ましてや日本人の私には、カルチャーショックがデカい!牛や羊がそこいらに放牧しているド田舎サマセットでの最初の洗礼は、大鎌で草刈りをするScythingでした。まったく見たことも聞いたこともないこのScything。元ヘビメタ少女だった私には、大鎌といえば、死神が持っているイメージぐらいしかありません。しかし、ここサマセットを中心にブリテン島の南西部では、かなり大きなブームになっており、大鎌草刈り競争の大会が毎年開催されているほどです。  でもここで普通に私は疑問に思いました。なんで、芝刈り機や草刈り機使わないの?と。その答えは「ガソリンを使わず、うるさい音もしない大鎌での草刈りは、エコで自然に優しいから」。どこかで聞いたような心地よいフレーズ。21世紀の今、そんなんで仕事になるの? 半信半疑だった私でしたが、急遽仕事で必要となり、これも良い機会ということで、早速初心者コースを受けてみることにしました。 大鎌のセッティングについて説明する講師のサイモン。英国で数少ない大鎌のエキスパートのひとり  古いお屋敷を、研修設備付きのエコB&Bに改築した、モンクトン・ウェルド・コート(Monkton Wyld Court)に週末二日間泊まり込みで、大鎌の基礎、歴史から実際の使い方と刈った草の処理まで、みっちり講習を受けてきました。講師は、ヒッピーコミューンで暮らして何十年のベテラン、サイモン。映画『ハリーポッター』にでてくるハグリッドのような顔。ヨレヨレのシャツ、ズボン、サンダル姿。無愛想で独特な話し方。パンチの効いたキャラが印象的です。そんな彼が、大鎌をブンブン振り回すものですから、ヒヤヒヤもの。いつもの好奇心が疼いて参加したものの、えらいところにきてしまったもんだと焦りました。しかし、私と同じようにガーデニングを生業としているひとたち、オーガニック牧場の経営者、庭の荒地をメンテしたい主婦、自然保護区の管理に役立てたいひとなど、私と似たような目的で集まった参加者に、ちょっと救われたのです。  大鎌と一口に言っても、実は地域によって違います。英国式、オーストリア式、バスク式、また東欧、中東でも使用され、それぞれデザインが違います。大変興味深いのが、インドから東側のアジアでは、大鎌は使われていないようです。風土の関係なのか、体の使い方の問題なのか、なぜ発展しなかったのかは謎ですが、どうりで日本人の私には、馴染みのない農具だったわけです。今回習ったのは、オーストリア式。英国の従来の大鎌はとても重く、力のある若い男性用に作られたものでしたが、オーストリア式は、全土の3分の2が山岳地であるため、機械がいけない急斜面での作業が可能で、女性や子供でも使える軽量なものになっているということで、最近英国でも主流になっているそうです。 左が英国式。右がオーストリア式。重さがぜんぜん違う  使い方は、まず左手で上、右手で下のハンドルを握り、鎌刃が地面と水平になるように少しだけ浮かせます。右後ろにおもいっきり引いてから、半円を描くように左へ、グイッとスイングさせていきます。そしてまた右後ろに戻すの繰り返し。ゴルフで、ドライバーを上から下へと振り下ろすのと同じ要領で、下半身は固定し、上半身、特に腰を使って、右から左へとスイングさせるのがコツです。15分ぐらい刈ったら、砥石で刃を研がないと、たちまち切れ味が悪くなるので、定期的にケアが必要です。そして、丸1日使ったあとは、刃がなくなってくるので、Peeningという、刃先をハンマーで打ちながら薄く伸ばしていき、再度砥石で研いて、切れる状態にする作業が必要になります。  草刈りの基本動作はそう難しくないのですが、実際やってみると、うまく草が切れなかったり、石に当たったりと、思いの外習得するまで、みな時間がかかっていました。しかも、両足を開き、中腰になり、右から左へとスイングしながら、徐々に前に進み、草を刈っていくのは、かなりの重労働。太もも、腰、両腕、手のひらが、筋肉痛でパンパンに。振れば振るほど、汗がダラダラ。芝刈り機で楽々やっていた作業が、手作業だとこんなにも大変だとは・・・。昔の人々は、タフだったんだなと感心してしまいます。 Peeningと言われる、刃先を叩いて薄くし、刃を再生する作業。写真中央の黒い突起をハンマーでひたすら叩きながら、刃の隅から隅まで鋼を伸ばしていく  かなり体力と手間がかかる作業。エコとは言え、こんなめんどくさいこと、わざわざやる必要ある?機械でチャッチャッと片付けた方が、断然お得と考えてしまいがちですが、そこにはメリットもありました。まず、急斜面やボコボコの地面など機械が使いづらい場所で使える。そして、雨や露で濡れた草は、機械では詰まり刈れないが、大鎌は逆に少し湿っていた方が、よく切れる。冬の霜が降りた草でも問題ないそうです。私のような、現代社会の利便性にどっぷり浸かっている人間には、自然にやさしいからと大鎌で芝刈りをするほどの、強いポリシーはありませんが、ガーデニングの道具としてなら、それなりの使い勝手はありそうだなと感じました。 Green Scythe Fairは、摩訶不思議なイベント  洗礼を受けたあと、サマセットの文化をさらに深く体験すべく、6月に開催された大鎌草刈り競争の全国大会・Green Scythe Fairに、凸凹歩きチームメイト・ジルちゃんと家族一緒に行ってきました。小さな村のイベントとして始まったものが、今では前売りチケットが完売するほどの大変な盛り上がり。大会内容は、①決めれれた面積を大鎌で刈っていき、速さと切れ具合を競い合う、大鎌草刈り競争。個人戦と団体戦があります。②刈った草を木の骨組みに上手に積み重ねて、どこのチームが一番高く綺麗に盛れたかを審査する、積みわら競争。合図とともに、長髪、髭、サングラス姿のオジさんが、スースーと手際よく刈っていく横で、ワンピース姿の女性が、スカートをなびかせながら大鎌をスイングさせていき、2メートルある大きな男性は、特大の大鎌で力強くどんどんと進んでいく。朝から晩まで、大人たちが真剣勝負をしていました。 大鎌草刈り大会のウェブより。© Green Scythe Fair  大鎌大会の傍、音楽、ダンス、トークショーなども開催され、各ブースでは、自然食、工具、手作り工芸品などの販売から、地球温暖化問題、環境保全に取り組んでいる団体のPR活動まで。電気は、すべて太陽光と風力発電。お手洗いは、コンポスト(バイオ)トイレ。ゴミ分別も徹底した、まさにヒッピー・フェスです。ただ興味深いのは、ここにいる人たちは、私たちがよくイメージする60年代米国発祥のSex, Drugs, and Rock 'n' Rollのヒッピーたちとは若干違い、英国の中世時代に回帰しているような、独特なカラーを放っていました。J・R・R・トールキン『指輪物語』の世界にいるような感じです。 [embed]https://www.youtube.com/watch?v=TWdxD4ci8xQ&feature=youtu.be[/embed]  癒し、エコ、オーガニックといった言葉が容易に使われる今、机上の空論ではなく、自分たちの体と人生を使って、自分たちの信じる自然回帰の世界を作り出そうとしている人たちが、そこにはいました。鉄のような意思とそれを体現していく力強さ。自分の手を土や血で汚し、汗水垂らして真剣に取り組む姿。考え方すべてに同意はできませんが、口だけ番長ではない彼らは、尊敬に値します。その彼らを象徴するのが、大鎌で草刈りをするScythingなのです。  最近大鎌は、ナショナルトラストなどのチャリティー団体が、使い方をボランティアに指導し、保全のいち道具として普及し始めています。すでにヒッピーたちだけのものではなくなり、人々がその良さを再確認し始めたようです。なによりも、腰回り、太ももが気になるあなたには、ぜひともオススメしたい。ScythingでExercising。一度お試しあれ!! 参考資料: 大鎌草刈り講座 monktonwyldcourt.co.uk Green Scythe Fair www.greenfair.org.uk 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022 ...

庭に置かれたバードフィーダー(餌台)。ハトやシジュウカラがそれぞれ好みの餌を食べに来ています  初霜が降りると、クリスマスプレゼントや年賀状のことを考えだし、年末年始のお祝いモードを徐々に感じ始めます。このちょっとウキウキした感情は、宗教関連の祭り事が続くこともあり、どこかでみなと共有したい、分かち合いたいと身勝手ながら思うものです。私も「自分たちだけご馳走ばかり食べて申し訳ない」と感じます。そして「一緒に冬を乗り切ろう」とエールを送る意味も込めて、日頃楽しませてくれている野鳥たちへバードケーキを作り、庭の木々に吊るします。  バードケーキとは、鳥の餌をラードで固めた、主に冬に与える練り餌のことです。英国では、バードウォッチングが盛んで、庭に野鳥用の餌台バードフィーダーや水浴び用のバードバスなどを設置する人が多くいます。そこに集まってくる鳥たちを家の窓から眺めて楽しむことは、ごくごく普通の光景です。どこのスーパーマーケットへ行っても、ペット用品コーナーには、犬猫用の餌と同様、野鳥用の餌や餌箱が必ず陳列されています。それだけ野鳥は身近な存在のようです。 スーパーマーケットには、いろんな野鳥用のエサが棚に置かれています  木々の枝に吊るされたバードケーキは、ちょっとしたクリスマスデコレーションのようで、お祝いモードをさらに盛り上げてもくれます。餌が少なくなる寒い冬を生き抜くために、ナッツや穀物だけでなく、ラード、チーズ、ドライフルーツを混ぜて、タンパク質、糖質、脂質ばっちりのハイカロリーなケーキを作りました。レシピは、こちら。 ① ボールに、細かく砕いたナッツ、ドライフルーツ、オーツ麦、鳥の餌など、キッチンで余った食材をうまく活用し、自由に選んで入れていきます(塩や砂糖などが入っているものは少し控えめ、パンなどの穀物を加工したものは入れず、なるべく素材そのままを使用)。 野鳥たちが寒さに耐えられる体力作りを助けるために、タンパク質、糖質、脂質の三大栄養素を、バランスよく入れてあげるようにします。(ボールは、ラードでベタベタになるため、洗うのが大変です。ワックスペーパーやアルミフォイルなどを使用すると、洗う手間が省けます。) ② チーズをおろし器ですりおろしながら、加えます(塩分があるので、入れすぎないように注意)。 ③ 寒さ対策のために、ラードを小さく切り、ボールへ。ちなみにこのレシピは、冬用になります。 ④ ラードを指先で潰しながら、体温で柔らかくしていきます。(手は、油でベタベタになるため、のちほど洗うのに苦労します。必要とあれば、ビニール手袋を使用すると便利かもしれません。) ⑤ 溶けたラードと餌をうまく混ぜます。 ⑥ 写真のように、まんべんなく混るまでかき回します。  クリスマスっぽく、赤いリボンやひもで吊るし、松ぼっくり、アイビー、月桂樹の葉、乾燥させたラシャカキグサの花穂、オークの枝などを使ってデコレーションしていきます。ナチュラルテイストに、そして食後のゴミを考えエコなものでと思い、すべて自然素材にこだわりました。バードケーキは、子供達と一緒に作ってもきっと楽しいはずです。手をベタベタにしながらケーキを作り、庭にあるものを自由に使い飾り付け、外に吊るして野鳥観察。冬のアクティビティにオススメです。 鳥たちがうまく餌を食べれるよう工夫し、彼らに警戒させないよう自然素材で飾ってみました。クリスマスを意識して赤と緑ペースの色合い。童心に返ります。  リスやネズミなど鳥以外の野生動物たちが食べに来ることもあるので、それを避けるために、小鳥たちだけが食せるような木の枝を探し、吊るします。この時に忘れないようにしているのが、鳥たちの水飲み場です。冬の時期、餌は結構あげている方がいますが、水のことも気にかけてあげることが重要です。凍結で飲めない状態になり、脱水症状を起こしやすいのが、意外にも冬にはあります。 バードケーキの上にも、シリアルやナッツをトッピングして、さらに可愛く美味しそうに。大きいナッツは、彼らの足場になればと思いました。地面に落ちたら、他の野生動物が処理してくれることでしょう(笑)。 雪が降った後や霜で地面が凍っているときにあげると、鳥たちも喜びます。  バードケーキを吊るし始めの2、3日は警戒しているのか、それとも気がついていないのか、ノータッチでしたが、その後餌を見つけた鳥たちが、頻繁に突きにき始め、1週間後ぐらいには影形もなく、平らげていました。残念ながら私のカメラにはその様子を収めることができませんでしたが、英国で人気ナンバーワンのヨーロッパコマドリ、人懐っこいシジュウカラ、ビートルズの歌"Blackbird"でも有名なクロウタドリなどが、私の特製クリスマスケーキを堪能していました。私の気持ちが野鳥たちに通じて、日頃の糧を一緒に感謝し祝えたように感じ、寒さで冷えた体をポッと暖かくしてくれるものでした。野鳥との距離もぐっと近づき、彼らのことを今まで以上に気にかけるようになり、もっと知りたいと思うようになりました。野鳥との出会いは、散歩の楽しみをも、さらに広げてくれます。みなさんも、ぜひバードケーキを作って、庭に訪ねてくる野鳥さんたちと真のご近所交流してみてください。 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022...

 森や草原を歩いていると、多くの野生動植物を目にし、時の移り変わりを感じることができます。水仙の花が春の訪れを伝え、ツバメのスイスイ飛ぶ姿が夏を運び、リスがナッツを土に埋め出すと秋が近く、霜で真っ白になった木々が冬の静けさを演出。自然を観察しながら歩く、これがランぶら歩きの醍醐味のひとつではないでしょうか。そんな野生動植物を保護しているチャリティー団体、ザ・ワイルドライフ・トラスト(The Wildlife Trusts)が、今月2017年6月から全国一斉に、30 Days Wildキャンペーンをまる一ヶ月実施します。ザ・ワイルドライフ・トラストは、英国内にある2300ヶ所の自然保護区を所有、または、共同管理し、保護活動を展開しています。うちの近所にもエセックス・ワイルドライフ・トラスト(Essex Wildlife Trust)管理下の自然保護区があり、よくランぶら歩きしに行きます。 30 Days Wildキャンペーンパック申し込みウェブサイトより © The Wildlife Trusts 野花の種を無料配布  トラストはここ最近、Living Landscapeキャンペーンを展開。これは、トラストや他の団体が持つ保護区に現存する野生生物を守るだけでは、 自然保護としては不十分であり、彼らが数を増やせる環境を広げることで、生物多様性の世界を実現しようという目的で始まりました。具体的には、自宅の庭や校庭に野生動物が住めるような工夫、例えば庭の囲いは垣根にする、鳥たちが食す植物を植える、害虫を駆除してくれる虫たちの巣箱を庭に設置する。そして自然観察する。つまり、自宅で自然保護区を作ってしまおうというものです。そして今回の30 Days Wildキャンペーンは、Living Landscapeキャンペーンの中から派生した、自然体験強化キャンペーンで、”Random Acts of Wildness”のスローガンのもと、自然に触れる何かしらのことを毎日続けて、それを一ヶ月間記録に残そうというものです。野生動物が好む餌を置いたり、バードウォッチングしたりするだけでなく、ランチを外で食べたり、夫婦で庭でワインを楽しんだりと一日ほんの少しの時間でも自然と向き合う。人々に日頃から自然に馴れ親しんでもらい、野生動物に目を向ける習慣を身につけてもらうことが、目的のようです。  先日、エセックス・ワイルドライフ・トラストから、30 Days Wild Packが届きました。中身は、一ヶ月のカレンダー、シール、野花のタネ、キャンペーン活動の提案など。それぞれのグッズは、遊び心満載のワクワクさせるデザインで、子供はもちろん、大人も童心に帰って、自然の中へ飛び出していきたくなります。余談ですが、英国のチャリティー団体は、かなりデザインやPRにこだわっていて、よく研究されています。有名な広告代理店が関わっていることもあるようで、それだけ世間に上手にアピールすることが、活動を理解してもらい、会員を増やす結果になることを知っているのでしょう。シンプル&スマートで、親しみのある、インパクトが強い、エキサイティングなデザインが、施されている。とても真面目で、時には深刻なテーマで取り組んでいる団体もいますが、それとは裏腹にヴィジュアルは、キャッチーでクールな興味の引くものが多いです。 キャンペーン中に何ができるか、トラスト側から沢山のアイデアが提示されている。30 Days Wildキャンペーン・ウェブサイトより © The Wildlife Trusts スマートフォンでアプリを使い、参加もできる  今回はSNSも駆使し、#30dayswildのダグをつけて、お互いの活動を報告し合うことも、キャンペーンの目玉のひとつとなっています。専用のアプリをダウンロードすることもできます。さて、私は明日から、どんな野生動物に会え、彼らに何ができるのでしょうか。Go Wild!! 参考資料: ザ・ワイルドライフ・トラスト www.wildlifetrusts.org 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022 ...