フォレジング11

温故知新@Nature ー フォレジングに強い味方あり

 日本にいたころ、春から秋にかけて、山菜採りやキノコ狩りでの遭難事故のニュースをよく聞いた。山に入る理由は、登山がダントツの1位だが、山菜採りやキノコ狩りが2位にくる地域もあるようで、人気だ。ついつい夢中になってしまい、滑落、道迷いするケースが多いとか。気持ちはよく分かるが、くれぐれも安全第一で楽しんでほしい。

フォレジング14春になると、近所の丘一面をラムソンが埋め尽くす。ニラの代用品として、餃子の具に入れると美味

 不思議なことに、英国ではこの手のニュースを聞いたことがない。もちろん、日本と英国では風土も地形も違うので、単純に比較するのは無理があるとは思う。ただ、これだけフォレジングが盛んなのに遭難があまりないのには、何か理由があるのだろうか。素人なりにちょっと考えてみる。

フォレジング12 秋になると、フォレジング教室があちこちで開催され、大変人気である

 まずは、歩ける道が見つけやすく、安全に利用できる環境が整っていること。英国には「フットパス」というレクリエーションのために整備された歩道が、網の目のようにあちこちに存在している。各フットパスには、黄色の矢印マークの標識があるため、私のようなおっちょこちょいでも道に迷いにくく、ほとんどの道は地元住民によってきちんと管理されているので、歩きやすい。私が普段、犬の散歩やフォレジングに利用しているのも、このフットパスだ。

 さらに、フットパスと並行してあるのが「アクセスランド」の存在。アクセスランドでは、主に環境保護団体や林業委員会が所有している土地、そして村が管理しているCommon land(日本の入会地と似たシステム)を、自由に歩き回ることができる。フォレジングも、生態に負担をかけない程度に推奨されているのが嬉しい。シーズンになると、フォレジング情報やワークショップなども開催されていて、人気のようだ。

 そして、上記の2つをすべて表記している「OSマップ」という強い味方がいる。Ordnance Survey(英国陸地測量部)が発行している地図で、Exploreシリーズと呼ばれている2万5000分の1地形図は、ウォーキングやサイクリングをする人間にとってはマストアイテム。これがあれば、ほとんど迷わない(ただし、基本どこを歩いても良いスコットランドに関しては、また別の話)。素人でも簡単に理解できるデザインで、読図に自信がない私のようなド素人でも安心して使えるので、とても便利だ。また、どこの本屋、観光案内所でも買えるのもありがたい。最近では、デジタル版も充実していて、スマフォのGPSで現在地を表示できたり、歩いたコースを記録できたりする。天下のGoogleマップさんでは、太刀打ちできない領分だ。私の場合は、紙版とデジタル版の両方を必ず持って歩きに行く。また、紙版は本棚にズラッと並べらた私のコレクションになっていて、新たな地図が加わるたびに、ニヤッとしてしまう。

OSマップ・Exploreシリーズ。スマフォ・アプリ版もあり。ナビゲーションには、両方を携帯するのが、ベスト

 ということで、私が出した仮説は、上記のような歩く環境が整っているため、遭難が少ないのではないかということ。ただ、フォレジングには、もうひとつの身の危険がある。キノコの誤食事故。こちらは、英国でも時々ニュースになる。リスクが高いため、私はまだ手を出せないでいる。まずは、キノコ狩りが得意なお友達でも作ることから、始めようかと思う。

【この記事は、自然体験.comに連載された記事『英国カントリーサイドにて』を再編したものです。】


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