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雨上がりの朝、どこまでも続くブルーベルとワイルドガーリックの群集に、身も心も肌も、洗われてしっとり * 一日目は、こちら >>  二日目:豪華な朝食でバッチリ腹ごしらえをして、バードリップのB&Bをあとに。車道に出てすぐコッツウォルド・ウェイの標識を見つけ、森の中へと入って行きました。湿気を帯びた暑さは、昨夜の嵐ですべて流され、ヒヤッとした空気が、足元から湿った大地の匂いを運んできます。新緑も恵みの雨を喜んでいたのか、艶やかな光を放っています。雨上がりは、独特の静けさと清らかさがあり、歩いていると洗礼を受けているような・・・。私利私欲にまみれている私たちには、なおさらそれがビシビシ強く感じられるのでしょう。胃も心も満たされ、「極楽じゃ〜」と、まったりしてきたふたり。歩く速度もノロノロ。上を見上げれば、ブナの葉で覆われた空は、緑で埋め尽くされ、その隠された青空が逆に地面から湧き上がってきたかのように、ブルーベルの群集が足元からどこまでも続いていました。ここウィットコンブ(Witcombe)の森は、英国国内でブルーベルの名所といわれているだけあります。本当に可愛らしい春の光景。日本の桜を愛でるときに感じる、美しさと儚さへの賛美とは、また違う味わいのお花見です。 [osmap centre="SO8910712455" zoom="5.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswolds-Way-_-Birdlip-to-Painswick.gpx" markers="SO9244714520!red;出発点: バードリップ|SO8658009625!green;終着点: ペンズウィック"] [osmap_marker color=red] 出発点: バードリップ [osmap_marker color=green] 終着点: ペンズウィック ナショナル・トレイルのどんぐりマーク、凸凹コンビが名付けた"Acorn God"に導かれコッツウォルズ地方を満喫中  生い茂る高木の中をひたすら歩いていきます。気温が徐々に上がり、熱気が篭り始め、じとーっと汗が出始めました。時々ポコっと視界が開けるスポットで、風にあたり涼みながら、遠くの田園風景をボーと眺め、そしてまた森の中を進む。それを繰り替えしていきます。コッツウォルドの景色は、まさに「Chocolate-box ー おみやげ用のチョコレートの包装箱に載せている写真のような美しさ」。どこをとっても絵になります。コッツウォルズ地方は、14〜16世紀に羊毛産業で栄えましたが、18世紀産業革命後、時代は毛織物から大量生産の綿製品へ移り、時代に取り残されてしまいます。しかしそれは逆に奇跡的に荒らされることなく、古き良き英国を今に残すことができたました。英国ので「カントリー(Country)」の意味は、日本で言う「田舎」のイメージとは違います。美しい田園地帯に家を持つことはステイタスであり、逆に都会にしか住めない人たちは、労働者といった感覚があります。つまり、カントリーライフは、英国人にとって、洗練された憧れの生活なのです。その夢見るカントリーライフで一番人気エリアが、このコッツウォルズ地方。ロンドンから2時間ほどで行ける理想郷として世界中の観光客を魅了し、英国セレブやリタイアしたひとたちが、こぞって家を購入する人気のスポットとして返り咲いたのです。その後、この美しい景観を守っていこうと、1966年にArea of Outstanding Natural Beauty – AONB(特別自然美観地域)に指定され、国、地方自治体、住民が協力して、持続可能な景観保護と地域社会に努めています。その効果の現れなのか、外国人の私たちでも歩いていて、「なんか知らないけれど、懐かしいなぁ〜」とそんな気分にさせてくれます。 チーズ転がし祭りが開催されるコパーズ・ヒル(Copper's Hill)。写真ではわかりずらいが、かなり急斜面  タラタラ歩いていると、そこへ突然とてつもない急な坂に出くわしました。「この暑い中、マジでここを登るのか・・・」と地図をなんども見直しましたが、そこに選択の余地はありません。諦めて登り始めていきますが、距離がそうないためか、上まできれいな直線の道になっており、乾いた土で足は滑るは、暑さで息がさらに苦しいはで、ヘトヘト。「朝食のエッグベネディクト食べ過ぎなければよかったよー」と叫ぶふたり。後悔先に立たず・・・というか、先に進まず。ようやくの思いで登りきり、広場へと出てきたところで、ふたりともまさに「Time!! ー ちょっと待った!」。地べたに座り込みひと休みしなくては、動けませんでした。「なんじゃ、ここは」と水を飲みながらガイドブックを見ていると、英国の奇祭のひとつであるThe Gloucestershire Cheese Rolling ー チーズ転がし祭りが開催される丘ではありませんか。日本のテレビ番組で、お笑い芸人さんがこの祭りに参加した模様が放送されていた、あの丘です。「こんなところ、チーズ追いかけて転がり落ちていくなんて、アホか!」ふたりとも首を横にフリフリ「英国人の考えること、本当によくわからないよねー」と苦笑い。 地元民たちが、愛犬とともにランニング。この環境が家の近くにあることは、健康面から考えても、必要なこと 凸凹コンビの未来の姿!?どこへいっても、女性二人で仲良く歩く方々をよく見かける。どこの国でも女性は元気 地元に愛される道でなければ、後世には残せない AONB指定地域総面積(黄色部分)は、2038平方キロメートル。ほぼ東京都の大きさぐらいで、英国内のAONBで一番広い。青い線が、コッツウォルド・ウェイ © Cotswold Way | National Trails  今回の旅を通して印象的なのが、訪問客だけでなく、地元のひとたちが、犬の散歩やランニングをしている姿をよく見かけたことです。コッツウォルド・ウェイは、AONB指定地域の一番西側に、北から南へと道が一本引かれてたところになります。観光客が訪れるチッピング・カムデン、ブロードウェイ、バースなどを通過しますが、コースのほとんどは、地域住民の生活圏内を通り抜けていきます。ですので、観光ツアーで出会う景色とは違い、コッツウォルド本来の姿が垣間見れる。観光スポットが表なら、このトレイルは裏道を歩いているような感じです。トレイルと聞くと、アウトドアや観光目的で、お客さま向けのものと考えがちですが、英国の場合は、まず住民が日常で利用しているフットパスがベースになっています。レクリエーション目的でのフットパス保護運動は、300年前に始まりましたが、それ以前から普通に通勤通学で使っていた生活歩道がフットパスです。そして、それをより面白くしようと作られたのが、数多くあるフットパスを一本に繋げた、今回のコッツウォルド・ウェイ含むレクリエーショナル・トレイルです。米国のウィルダネスを歩くトレイルとは、まったく異なる文化がそこにはあります。だから、ヘタレな我々凸凹コンビでも、そんなにトレーニングもせず、気軽に歩きに行けるトレイルが多いのです。 石屋の敷地に、フットパスが縦断している。勝手に入って、そのまま進んでも、問題なし 「ゴルフ場にこれから入ること、心せよ」と注意書きが・・・。「入ってもいいけど、なんかあったら自己責任よ」という考え方、英国らしい  その後も森の中を歩き続け、車道にでてきたところで、今回のコース最後のポイントになる丘陵の上にできたもうひとつの森、ペンズウィック・ビーコン(Painswick Beacon)にあるパブを発見。キンキンに冷えた飲み物求め、倒れこむように中へ。炭酸水を一気飲みしたジルちゃんは、「もー、蒸れて我慢できないよ」と靴を脱ぎ、サンダルへ履き替え始めました。一息ついた後、重い腰を持ち上げて、もうひと踏ん張り、ペンズウィック・ビーコンの中を歩き始めます。暑さで体が怠く、二人とも無言に・・・。でも、これはこれで、心地よい時間が流れているのです。途中、この地方の家々に使われいる蜂蜜色の石灰石、コッツウォルド・ストーンを扱っている石屋の敷地内やゴルフ場を抜けて行きます。人の家に勝手に入り込むようで、外国人ふたりは戸惑うのですが、でもいいんです、勝手に入って。「通行権という印籠が、目に入らぬか〜ぁ!!」と、石がゴロゴロあっても、ゴルフボールが飛んでても、堂々と歩いて行きます。そうこうしているうちに、最終目的地のペンズウィックの村に到着し、やっぱり最後はビールで旅のシメとしました。 ゴルフ場を、サンダルで歩くジルちゃん。違和感があっても歩く権利があるので。でも、ボールには気をつけて! 真のコッツウォルドを見たければ、おススメのトレイル  まずは、地元のひとたちが歩いてなんぼ。それが英国のトレイルの根底にはあることを、今回のコッツウォルド・ウェイを歩いていて強く感じました。逆に、地域住民たちが歩かない道に、郷土愛からくる愛着もなければ、整備し続けていこうと思わせる気持ちも生まれない。安易に観光資源としてトレイルを管理していても、道は存続できない。その姿勢が、国内外でも定評があるAONBコッツウォルズが進めている持続可能な景観保護に繋がっているんだろうと感じました。ただのポッシュ気取りのエリアではないんだな〜、コッツウォルズ地方は・・・。ふたりでチョコレートを頬張りながら、そう思ったのです。 8th May 2016, Sun @ Cotswold Way (Birdlip - Painswick), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way : Trail Guide (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022...

 春が来た、春が来た、どこに来た〜♪ 英国にも春が来たぞー!!ということで、友人のジルちゃんと英国を歩く季節がやってまりました。英国育ちでない凸凹コンビが、ぶらぶらと歩きながら、千変万化するこの島国を肌で感じ取る。そんな旅は、山あり谷ありの我々の人生とも重なるということで、二人旅シリーズを"Deco Boco Walking"と命名しました。そしてこのDeco Boco Walkingの記録を残していこうと、フェイスブックで専用のページも開設してみました。 Deco Boco Walking: www.facebook.com/walkingupdown/ ぶらぶら歩きもページ開設もあまり深く考えず、ノリでやっておりますので、今後どんな展開になりますやら・・・、まずは、行けるところまで進んでみます。気長にお付き合いいただければ幸いです。 クリーブ・ヒルにあるゴルフ場から今回の旅はスタート。COTSWALD WAYの標識がお出迎え  さて、今回の旅は、春といえばお花見でしょ!っということで、英国流お花見は、なんぞやと考えた時、春の花の代名詞、ブルーベルを愛でることではと思い立ち、有名スポットがいくつかあるコッツウォルド・ウェイを歩いてきました。なんせ凸凹コンビのふたりは、Lazy Lady Walkers(気合の入っていない、ゆるゆる女性ハイカー)でして、寒くて、暗くて、泥だらけの英国の冬は、もっぱら脳内で旅してばかりでしたが、ようやく靴の紐を閉めて、外へと飛び出す心の準備が整いました。コッツウォルド・ウェイは、前回おしゃれに紅葉狩りと思って出かけたら、暴風雨に見舞われ、コッツウォルズ地方のポッシュな(上級階級らしいさま)雰囲気を味わうどころか、服はびしょ濡れ、髪はボザボザ、足元は泥だらけという、ワイルドな旅で終えましたので、今回はある意味リベンジ!!(コッツウォルド・ウェイ 秋編は、こちら>>。)前回歩いたコースより、若干北へ上がったコース、一日目は、クリーブ・ヒル(Cleeve Hill)からダウズウェル(Dowdewsell)、二日目は、バードリップ(Birdlip)からペンイズウィック(Painswick)をぶらぶらしました。 歩くひと、犬の散歩しているひと、羊の放牧。そして、ここはゴルフ場。まさに多目的に使われている土地があるのが英国式 [osmap markers="SO9891927164!red;クリーブ・ヒル" zoom="0"][osmap_marker color=red] クリーブ・ヒル  一日目:雨上がりの五月始めの週末、英国障害競馬の祭典が有名なチェルトナム(Cheltenham)の駅に降り立ち、そこからタクシーでクリーブ・ヒルに向かいました。ブルーベル満開時期は過ぎてしまっているかなと少し心配しながらも、坂道を上がっていく車に揺られ、私たちの期待値も高まります。今回のスタート地点は、なんと丘の上にあるゴルフ場。早速COTSWALD WAYの文字とナショナル・トレイルの印であるどんぐりマークが記された標識がお出迎えしてくれました。英国では、フットパス(通行権のある歩道)が法律によって守られているので、そこが私有地だろうと、農園だろうと、フットパスがあればいつでも歩いてOK。もちろんゴルフ場でも同じ。ゴルファーとは明らかに違う服装の人たちが、プレイとはなんら関係なく、勝手に歩いているのです。さらに今回のゴルフ場には、ゴルファー、ハイカー、ランナー、サイクリスト、犬の散歩するひとたちと混じって、なんと羊も遊牧していて、皆好き勝手にそれぞれの方向へと進んでいく、まず日本では考えられない不思議な光景がありました。さらに羊含め、お互いに邪魔しないように、いい距離感を保っていて驚きです。一歩間違ったらカオス状態になりそうなのに、絶妙なバランスで、のんびりと平和な時間が流れていました。でもよく考えたら、羊飼いたちが始めた遊びが起源と言われている(諸説あり)ゴルフ。また、草刈り機が開発される前は、放牧で伸びた草をコントロールしていたそうなので、羊がいてもおかしくはないはずです。むしろ、今の時代ではエコかも・・・。  「ゴルフボールが、羊のフンに突っ込んだら、どうするんだろうか?」「一発目で突っ込んだら、ホール・イン・ワンならぬ、プー(Poo)・イン・ワンだね。」とふたりで大笑いしながら、先へと歩を進めました。ゴルファーにとっては、迷惑な客です。 [osmap centre="SO9768123568" zoom="5.00" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswolds-Way-_-Cleeve-Hill-to-Dowdewsell.gpx" markers="SO9892427188!red;出発点: クリーブ・ヒル|SO9848919721!green;終着点: ダウズウェル"] [osmap_marker color=red] 出発点: クリーブ・ヒル [osmap_marker color=green] 終着点: ダウズウェル ナショナル・トレイルの印であるどんぐりマークの標識の向こうでは、ゴルファーがティーグランドでショットを打っていた。柵も囲いもない。共有が当たり前のようだ  コッツウォルドのウォルド(Wold)は、古語で丘(Hill)という意味になりますが、まさにその名の通り、ゆるやかな丘陵地帯 ー Rolling Hillsが続いていて、天気が良い日には、ウェールズまで一望でき、開放感があります。ナショナル・トレイルの中でも、比較的アプローチしやすいコースで、なだらかとはいえ起伏があり、変化に富んでいて、飽きがきません。ポツンと現れるコッツウォルドの石造りの家が並ぶ村がよいアクセントになり、まさに古き良き英国を体現した絵画のような風景。さらに、標識も道もきちんと手入れされていて、まず道に迷うことがないのは、私たちのような読図がイマイチの人間には嬉しい限りです。 生まれたばかりの子羊たちが、なんとも初々しい。母親にくっついて歩く姿は、自然と笑顔にしてくれる キッシング・ゲート(Kissing Gate)と呼ばれる門扉。人だけが通れ、家畜が逃げないようにするためのもの[  ベラベラしゃべりながら、丘の稜線上にある自然保護区、農地などを縦走していきます。我々ふたりは、身なりと話す英語(ひとりは、カナダ英語。もうひとりは、日本語英語)から、明らかにコッツウォルドの人間ではないのがバレバレで、地元の人たちも興味津々なのか、「どこから来たの?」とよく声をかけられました。ハイカー慣れしているのか、みなさんフレンドリーで、プチ情報を教えてくれたり、わざわざ道案内までしてくれたり。そして言葉の節々にコッツウォルドの住人である誇りが感じとれ、自慢の土地を見ていっておくれよの気持ちがひしひしと伝わってきます。お国自慢したくなるのは、どこも同じですね。 犬の散歩中の女性と遭遇。凸凹コンビを不思議に思ったのか、すれ違いざまに声をかけられた  そうこうしているうちに、丘の上から緩やかな坂を下り始め、今日のハイライト、ワイルドガーリックが生息するダウズウェル自然保護区の森に差し掛かりました。今までのどこまでも広がる空と大地の絵とはうって変わって、青々と生い茂る木々の中を抜けていきます。ヒヤッとする涼しい風が、汗ばんだ肌に心地良い。そして緑に白玉模様のカーペットとなったワイルドガーリックが一面に咲いており、目にはおとぎ話のワンシーンのように美しく映り、鼻にはニンニクの匂いを感じとれ、食欲をそそります。お腹空いたー!!ということで、倒れた丸太に腰掛け、遅めの昼食。朝握った鮭おにぎりを頬張ります。鼻からニンニク、口からシャケ。なんて素敵なマリアージュ。しかも、カナダ人のジルちゃんが、日本食のおにぎりを、英国の森で食す、へんちくりんな現象。思わずシャッターを切らずにはいられませんでした。 カナダ人が英国の森で日本のおにぎりを頬張る。シュールだなぁ〜  その後、更に丘を下り、大きな貯水池に出てきました。ひとりサイクリングで、一息している男性。水辺でピクニックを楽しむ若いカップル。森を散策している家族連れ。先ほどのゴルフ場同様、それぞれがそれぞれの楽しみ方でこの場を共用している。暗黙の了解で、お互いに邪魔しな距離感を保ちながら・・・。英国民性の素晴らしいことと一言で言ってしまえばそれまでなのですが、どうしてこのようなことが自然とできるのか。どうゆう経緯でこのような習慣が確立したのか、私には不思議です。でも確かなのは、そこには、何にも干渉されない心地よさがあり、現実の役職や立場などを忘れさせてくれ、自分が自分らしくいられる空間があること。だからこそ、みなこの場にいたんだと思います。 これでもかと続くワイルドガーリックの園 可愛らしい花を嗅いでも、にんにくの匂い  今日の旅はここまで。車道に出て、タクシーを呼び、明日のスタート地点、バードリップにあるB&Bへ。晴れていた空が、宿に着いた途端、黒雲に覆われ、夕立の雷が落ちてきました。それをBGMにいつも通りビールで乾杯!B&B内にあるパブには、ハイカー、サイクリスト、観光客、地元民で、いっぱいになっていました。ここでも異色凸凹コンビに話しかけてくる人が多く、中には毎年どこかへ歩きに行っている男性3人グループもいました。今まで、デムズ・パス、オファス・ダイク・パス、サウス・ウェスト・パス、のナショナル・トレイルを歩いてきたとのこと。天気のせいか、旅のせいか、酒のせいか、皆テンションが高く、ノリノリで話してきます。このような場が、いい情報交換の場になるようです。しかしみなさん、歩くの好きねぇ〜。 二日目につづく。 二日目は、こちら >>。 7th May 2016, Sun @ Cotswold Way (Cleeve Hill - Dowdeswell Wood), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way : Trail Guide (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022...

 深秋。朝晩の冷え込みは、冬の足音がそこまで来ていることを知らせてくれています。不思議な国、英国を歩こうと、カナダ代表ジルちゃんと日本代表シノの凸凹コンビがゆく。今回は、最後のチャンスを逃すなとばかりに、コッツウォルド・ウェイへ紅葉狩りに行ってきました。 [osmap markers="SO8497504976!red;ストラウド" zoom="0"][osmap_marker color=red] ストラウド  ロンドンから西北西150キロほどに位置し、石灰岩の丘陵地帯であるコッツウォルズ地方。羊毛取引で栄えた中世の趣をそのまま残した村、藁葺き屋根と蜂蜜色の石灰石、コッツウォルド・ストーンの家々と美しい田園風景が続いています。イングランドとウェールズ内で最大のArea of Outstanding Natural Beauty - AONB(特別自然美観地域)であり、まるでおとぎ話の世界にいるような景観が、古き良き英国を感じられると、英国セレブの多くが別荘を所有し、日本人観光客にも大人気です。そのコッツウォルズ地方を縦断したトレイルが、コッツウォルド・ウェイで、ナショナル・トレイルのひとつです。産業革命時代に起こったアート・アンド・クラフツ運動の重要な拠点のひとつだったチッピング・カムデン(Chipping Campden)から、女流作家のジェーン・オースティンが暮らしていた保養地のバース(Bath)までの、約160キロの道となります。今回は、トレイルのちょうど真ん中あたり、ペインズウィック(Painswick)からストラウド(Stroud)までを歩いてみました。  あいにくの天気。ガラス窓を激しく打ち続ける雨を気にしながら、バスに揺られて、ペインズウィックに到着。吹きっさらしの丘を、まるで矢が降っているような雨と風の中、歩き始めました。途中で出会った牛たちも「アンタたち、物好きね」と言いたいのか、不思議そうに我々を見つめ、道を通らせてくれました。前線が、妙に生暖かい雨をもたらし、二人のメガネを曇らし続けて、ちっとも美観を拝めません。強風で紅葉狩りどころか、葉と共に吹き飛ばされそうになりながら歩いている。このおかしな状況に、"This is ridiculous(アホくさい)!!"と叫び、笑いが止まりませんでした。道中、単独で歩いている、ずぶ濡れの男性に二回ほど遭遇しましたので、どうやらアホは私達だけではないようです。午後には雨が上がるという予報を信じて、まずは進みます。 [osmap centre="SO8393507371" zoom="5.50" gpx="https://rambleraruki.com/wp-content/uploads/2021/11/Cotswold-Path-_-Painswick-to-Stroud.gpx" markers="SO8658309648!red;出発点: ペインズウィック|SO8152304708!green;終着点: ストラウド"] [osmap_marker color=red] 出発点: ペインズウィック [osmap_marker color=green] 終着点: ストラウド 林の一部は、ナショナル・トラストの管理下に。そのエリアだけ、 綺麗に整備されすぎて、逆に不自然に感じる  トンネルのような細長い林の中へ。英国では、1600年、もしくはその前に存在していた森林をAncient Woodlandと国が指定し、保護の対象となっています。長年燃料として使われてきた森林は、今では国土全体の13%ほどしか残っていません。他の欧州国に比べても、圧倒的に少ない。そのため、どんなに小さくとも、古い木々が密生しているエリアは、徹底して管理しているようです。失ってから、森のありがたみを理解したのか、なんとも皮肉です。そんなAncient Woodlandに指定されているブナ林を、二箇所ほど通り抜けました。「Ancient Woodland ー 原始林と言われても、日本のばあちゃん家の裏にある雑木林みたいな感じだな〜。」「Woodland ー 森林地帯っていったら、カナダではクマやヘラジカが住んでいるようなところだよ。」頑張って自国の森林を守っている英国人の気持ちなどおかまいなし。よそ者外国人二人は、言いたい放題。しかし、英国の森林は森林で、独特の味がありますし、何よりも人が歩くことを前提に管理しているので、散歩には快適です。 目の前が開け、青空が見え始める。写真右、木々の向こうに見える青い線が、セブン川。そしてその反対側が、ウェールズ ナショナル・トラストのどんぐりマークが、私たちの歩きを見守り続けている  残念なことに、今回の強風で多くの葉は枝から地面へとすでに落ちていました。とはいえ、紅葉によるレッドカーペット上を歩いているようで、なかなか趣があります。足を踏み込むたびにサクサクと音がする。蹴り上げると、葉がヒラヒラと舞う。落ち葉と戯れ合う足は、体の奥底に隠れていた童心を、くすぐり始めました。そうこうしているうちに雨がようやくあがり、地元の人たちが犬の散歩に現れ始めました。高級ハンティング・ブランドのワックスジャケット、ハットに、長靴を履いた人たち。さすが、コッツウォルド。ポッシュな人たちが愛犬と共に、洗練された大人の時間を過ごしていました。どこぞの社交界に迷い込んだような、場違いの大きな「子供たち」のぶらぶら歩きとは、明らかに違います。しかし、童心にかえっても、しょせん中年おばさんのふたり。気にせず歩き続けます。  林を抜けて、再び丘へ出てきました。最後のひと押しとばかりに、強風が全てを飛ばし、突然青空が見え始めます。まるで、舞台に立った役者の目の前にある幕が上がったかのよう。ブリストルへと流れるセブン川。そしてその川を挟んで反対側に南ウェールズが広がっていました。ブレコン・ビーコンズ国立公園にあるブラックマウンテンズも見えます。雨風に打たれながらも、なんとかここまで来たご褒美。サプライズ・プレゼントに、歩く遊びに半信半疑だったジルちゃんの足も、必然と軽くなり嬉しがっているのがわかります。 スタイル(stile)と呼ばれる踏み越し台。左側にある木製の柵は、犬用。中央二枚の板を上にあげると、犬が通れる仕組みになっている  収穫後の畑、ワイン用のぶどう園、馬牧場を通り過ぎながら、徐々に丘から降ってくると、電車の音が聞こえ始めました。ストラウドがそう遠くないことを知らせてくれています。そしてついに、繊維工場への輸送に使われていたストラウド運河へと出てきました。この運河は、先ほど丘の上から見たセブン川へ繋がっているそうです。大雨のあとということもあり、歩いてきたフットパスはかなりぬかるんでいて、気が付いたら靴やズボンの裾が泥だけになっていました。なんとか泥を落として、街中のパブへダッシュ。ひと仕事終えて、ビールで乾杯。飲みながら、ふっとジルちゃんが、「今度カナダに里帰りした時、山靴探してこようかな〜」とつぶやきました。普通の運動靴で歩いていた彼女。どうやら、ぬかるんだ坂道は、さすがにすべることに気がついたようです。 ジルちゃんもぶらぶら歩きに本気になり始めたのかな・・・。しめしめ。 7th November 2015, Sat @ Cotswold Way (Painswick - Stroud), Gloucestershire トレイル情報: コッツウォルド・ウェイ オフィシャルサイト Cotswold Way (Aurum Press, 2012) 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022...

The Bard of Avon エイヴォンの詩人。  これは、英国を象徴する超有名人のニックネーム、その人物を表す隠語です。場合によっては、The Bardだけで呼ばれることもあります。このザ・詩人さん、詩はもちろん、劇作家として演劇・文学に多大なる影響を与え、彼のお芝居は世界中で上演されており、今もなお第一線で活躍していると言っても過言ではありません。また、英語という言語の可能性を広げた功績は大きく、英語圏の方にとっては、言葉の神のような存在です。そのため、彼の故郷であるストラトフォード・アポン・エイヴォン(Stratford upon Avon)には、世界中から巡礼に訪れる方々が、年間50万人以上に登るそうです。 [osmap markers="SP1963755124!red;ストラトフォード・アポン・エイヴォン" zoom="0"][osmap_marker color=red] ストラトフォード・アポン・エイヴォン  その人物、エイヴォンの詩人こと、ウィリアム・シェイクスピア。今年2016年は、彼の没後400年記念の年で、各地で上演やイベントが一年通して行われています。 お恥ずかしい話ですが、私は大学時代にシェイクスピアの授業を受け、とにかく彼の古典英語、特に詩がわからず、泣く泣く勉強した思い出があり、未だにシェイクスピア=小難しいイメージから抜け出せずにいます。ただ、英国に暮らしていると、新聞や雑誌の記事、テレビ報道、身近なところでは、結婚式スピーチなどで彼の言葉が引用されているのをよく見聞し、そのたびに彼の存在の大きさを感じさせられています。  そんなシェイクスピアのシェの字もわかっていない私が、観光客魂丸出しで、冷やかし半分、シェイクスピア誕生記念パレード&式典が行われた4月最終週末に、ストラトフォード・アポン・エイヴォンを訪れました。ただ、単なる観光ではつまらんと、私なりの巡礼方法で、お参りさせていただきました。それは、Shakespeare's Walking Weekという、地元ランブラーズ・グループによるイベントに参加し、歩きで彼の故郷を知るということです。ストラトフォード・アポン・エイヴォンは、英国中部地方都市・バーミングハムから、少し南下したところにある、エイヴォン川沿いの小さな町です。静かな田舎に、突如大勢の人たちで溢れかえるスポット出現。町中を歩いていても、英語だけでなく、世界中の言葉が飛び交っていました。記念行事があったためか、とにかくシェイクスピアに対する熱がすごい。彼の作品を理解できない私でも、人々の彼に対する深い尊敬の念は、肌でひしひしと感じられました。 Shakespeare's Walking Weekへ参加  そんな熱気に包まれた町の広場の一角に、ランブラーズのロゴがプリントされた反射チョッキを着た人たちが現れました。ストラトフォード・アポン・エイヴォンのランブラーズ・グループ(the Stratford-upon-Avon Group of the Ramblers)のみなさんです。ランブラーズ(Rambers)とは、英国におけるレクリエーション・ウォーキングとその環境保全活動をしているチャリテイー団体です。全国各地にウォーキング・グループがあり、自由に参加することができます。ストラトフォードのグループは、地元のウォーキング・ガイドブックを制作して観光案内所で販売したり、整備ボランティアを結成してフットパスをメンテしたりと、かなり精力的に活動しているグループで、この記念すべき年に、Shakespeare's Walking Weekを企画したそうです。「普通なら、Walking Festivalと打ち出すところだけれど、そんな大げさなものではないから、あえてWeekにしたの。みんなで、一年前から準備してきたんだけれど、それはまるで誰かの結婚式を準備するみたいだった。ささやかだけれど、私たちなりの方法で、この記念すべき年を祝いたかったのよ。」イベント・リーダーのスーザンさんが話してくれました。実際に参加してわかったのですが、役所、観光局、シェイクスピア関連団体が関与しているわけでなく、純粋に彼らだけで計画した、手作り感満載のウォーキング・イベント。一週間シェイクスピアゆかりの地12コースを歩く、こじんまりとしたものです。コースは、7、8キロ程度の短いものが中心で、中には車椅子で参加できるものも用意されており、気軽に参加してもらいたい彼らの思いが垣間見えます。現グループ所属メンバーは、300人ほどいるそうですが、実際に歩ける人は半分ほど。つまり高齢者が多いということです。そのため、このような機会が新しいメンバーを増やすきっかけになればと考えているようでした。 シェイクスピアが参加?!  30人前後の参加者が集まり、道に溢れている大勢の人たちをかき分けるように、ウォーキングはスタートしました。地元や近郊からの参加もあれば、アメリカ、アジア、中東からの観光客も一緒に混じり、中高年から若いカップル、学生仲間、ひとり旅の女性など、さまざまな人がいる光景は、ここストラトフォードならではだと思います。町を一歩出ると、今までの喧騒がうそのように、静かで穏やかな田園風景が広がっていて、まるで時空を越えたかのよう。緑の麦畑と黄色い菜の花畑のコントラストが永遠に続く大地の真ん中を、エイヴォン川がゆっくり蛇行し、ストラトフォードの町を通過していきます。シェイクスピアが眠る教会の尖塔が、天を指差すような鋭さで輝きを放っていて、その奥には、日本でも人気があるコッツウォルズ地方が見えていました。ストラトフォードの町中には、チューダー様式の建物が多く残されおり、シェイクスピアが生きた時代を体感でき、訪れた人たちを楽しませています。ただ私には、それらの建物より、むしろ丘の上から町とその周辺の景色を、地元の人たちと一望に収めたときのほうが、シェイクスピアの世界をリアルに感じられました。  散策しながらその土地を楽しむ。地元の人たちと歩を共にし、同じ時間を共有することで、その場だけが持つ独特のエネルギーと空気感をじっくり味わう。そこで生活している人々の話を通して、その地が刻んできた歴史や生活を知る。そうすることで、真の姿が見えてくる。歩く旅だけが持つ醍醐味のように思います。きっと英国人たちは、とうの昔にそのことに気がついていたのでしょうね。同じような歩くイベントが、UK各地で盛んに行われているのも、うなずけます。ストラトフォードという町は、シェイクスピアというひとりの天才によって成り立っているように思っていましたが、そこにある長い年月と共にできてきた自然と人々の暮らしが、彼の才能を開花させ、多くのすばらしい作品を残してくれたんだと、歩いていて初めて実感しました。そう思うと苦手意識の強かったシェイクスピアも、ぐっと身近に感じられ、自然に情が湧いてきます。「一度彼の演劇、観に行ってみようかな」とふと思う自分がそこにいました。 シェイクスピアも、この道を歩いたのかもしれない 23rd April 2016, Sat @ Anne Hathaway's Cottage & Hansell Farm, Stratford upon Avon 参考資料: ストラトフォード・アポン・エイヴォン ランブラーズ www.stratfordramblers.com 掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。© rambleraruki.com 2022...